光合成を調節する光スイッチの動作するしくみを解明
Digital PR Platform / 2024年6月13日 14時5分
Pg状態の構造を、以前に解明したPr状態の構造と重ね合わせ、どのような構造変化が起きているかを詳細に解析しました(図4)。
その結果、ビリン発色団のD環が、Pg状態では外側を向いた構造(C15-Z,anti)をとっていますが、Pr状態では内側を向いた構造(C15-E,syn)をとっていることがわかりました。
また、ビリン発色団の位置も大きく回転し、上下方向にもスライドしていました。
この構造変化に伴い、ビリン発色団を取り囲むタンパク質にも大きな構造変化が生じていました。Pg状態では、ビリン発色団の近くにあるタンパク質の部分は構造(S2.5シートとH2.5ヘリックス)がキュッと引き締まり、水分子が入り込む隙間がなくなっています(図4)。
しかし、Pr状態ではこれらの構造が緩んでタンパク質に穴が開き、水分子が入り込んでいました(図4下)。このことは、ビリン発色団を取り巻く環境が疎水的な環境から親水的へと大きく変化することが光変換に重要であることを示しています。
これまでの光受容体の研究の歴史において、ビリン発色団やそれを取り巻くタンパク質にこのような大掛かりな構造変化が生じる報告は今回が初めてです。
ビリン発色団の吸収波長は、発色団自身の構造の変化や、周囲のアミノ酸残基との相互作用など、多くの因子によって制御されています。本研究グループの以前のRcaEの研究で、ビリン発色団の4つのピロール環(A~D環)において、Pr状態ではすべてのピロール環の窒素原子にプロトンが結合していることを報告しました。
一方、Pg状態ではそのうちの1つのプロトンが外れることを見出しましたが、どの部位で外れているかは明らかではありません。X線結晶構造解析では結合したプロトンを観測できないからです。
そこで本研究グループは、化学合成とNMRを使った研究に挑むことにしました。
ビリン発色団のピロール環の窒素原子を、目印となる安定同位体窒素原子(15N)でラベリングし、そのプロトンの結合状態を1D NMRによって検出する方法を採用しました。ビリン発色団の化学合成という難易度の高い手法を用いて、B環のみ、C環のみに目印をつけたビリン発色団を数年かけて調製し、得られたわずか1回分の試料を用いて渾身の実験を行いました。すると、B環をラベルした試料において、プロトンが外れたシグナルが検出され、対照であるC環をラベルした試料においては検出されませんでした(図5)。
このことから、プロトンが外れる位置(脱プロトン化した位置)はB環であるということが証明されました。
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