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【青山学院大学】理工学部 長谷川美貴教授と千葉大学国際高等研究基幹・大学院薬学研究院の原田真至准教授の共同研究グループが、新薬開発に役立つ複雑な化合物の1工程合成に成功。〜ランタノイドが拓く創薬と環境の未来〜

Digital PR Platform / 2024年6月24日 20時5分

注目すべきは、この方法で作られたカルバゾールが非常に高い純度を持つことである。化合物には鏡に映った像のように左右対称の2つの形が存在し、通常はその混合物として得られる。しかし、同研究では、99%の純度で片方の形のみを選択的に作ることに成功した。医薬品開発にはこの純度の高さが極めて重要である。なぜなら、化合物の2つの形は体内で全く異なる作用を示すことがあるからだ。


さらに、触媒として利用したホルミウムは反応後に回収できる。ランタノイドは電子機器や電気自動車などに不可欠な貴重な天然資源である。この回収・再利用技術は、資源の有効活用と環境保護に大きく貢献する。


研究グループは、この革新的な合成法開発にとどまらず、以下のような3つの異なる先端技術を駆使して、触媒の働きを"見える化"した(図3)。

1. ランタノイドの「光る性質」を利用:触媒に使ったホルミウムと同様に、ユウロピウム(元素記号:Eu) 注5)もカルバゾール合成の優れた触媒として機能した。研究グループは、ユウロピウムの光り方が周囲の環境によって変化する性質を利用して、反応中の触媒の状態変化を光の変化として捉えることに成功した。これは、化学反応の現場を間接的に"見る"ことができる、とても画期的な試みである。



2. 触媒の「指紋」を調べる:ヒトが固有の指紋を持っているように、分子にも独自の指紋がある。研究グループは、質量分析という技術を使って、触媒の「分子指紋」を調べた。その結果、触媒がきちんと設計通りの構造を持っていることを確認できた。つまり、理想的な触媒が正しく機能していたことを裏付けた。



3. コンピューターで反応を「再現」:最後に、密度汎関数法という最新の計算科学を用いて、化学反応をコンピューター上で再現した。その結果、なぜ特定の形の化合物だけが選択的に作られるのかを原子レベルで説明することができた。

これらの取り組みによって、目に見えない分子の世界の「ここが、こうして、こうなる」を可視化した。その結果、この革新的な合成法が成功する理由を科学的に裏付けることができた。



■今後の展望
同研究は、新薬開発の加速に大きく貢献することが期待される。特に、がん治療薬として知られるビンブラスチンなど、カルバゾール構造を持つ医薬品の効率的な人工合成が可能になる。また、ランタノイドの再利用技術は、持続可能な化学産業・製薬産業の実現にも寄与する。さらに、触媒の見える化によって、より良い触媒の設計や、より難易度の高い化合物の合成にも役立つことが見込まれる。今後、この技術を他の分野にも応用することで、環境に優しい化学反応の幅広い普及が期待される。

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