【芝浦工業大学】光ファイバーセンサーにおける空間分解能の推定法を確立 -- 老朽化・被災したインフラ施設の健全性診断に貢献 --
Digital PR Platform / 2024年7月10日 14時5分
■研究の概要
そこで、研究チームは、BOCDRにおいて、光が波長よりも小さな微粒子によって散乱される「レイリー散乱」を併用し、変調振幅を、ひいては、空間分解能を間接的に正確に推定する手法を提案しました。本手法では、レイリー散乱によって誘起されるノイズのスペクトル幅を分析し、光源の変調振幅を従来よりも正確に見積もります。BOCDRに対して、追加の装置やシステムの変更を必要としないのが特長です。
■今後の展望
空間分解能を正確に推定するための本手法は、装置の追加やシステムの変更を伴わないため、今後、BOCDRの普遍的な技術になることが期待されます。結果として、老朽化・被災したインフラ施設の健全性診断の効率化が促進されると考えられます。
■語句解説
※1 変調振幅
BOCDRでは、光源となる半導体レーザーの駆動電流を直接変調することで、出力光の周波数を変調できます。変調振幅は、周波数変調が施されたレーザー光の周波数の変動振幅を意味します。
※2 空間分解能
分布型光ファイバーセンサーの性能指標の1つで、測定ファイバー上の近接した2点をそれぞれ独立して識別できる最小の距離。値が小さいほど、空間分解能は高いといえます。なお、BOCDRにおける空間分解能は、レーザー光に施す周波数変調の変調振幅に反比例します。これまでに、mmオーダーの空間分解能が達成されています。
※3 ブリルアン散乱
光ファイバーに強い光を入射すると、ガラスを構成するSiO2分子が振動し、この振動が音響波として伝搬します。ブリルアン散乱は、音響波によって生じる散乱で、その散乱光は入射光よりも周波数が低くなります。
※4 ブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)
ブリルアン散乱を用いた分布型光ファイバーセンサーの方式。連続光の相関制御によって位置分解を行い、測定ファイバーの片端からの光入射で動作するのが大きな特長です。これは、敷設時の自由度が高い上、測定ファイバーが破断してもその箇所までは分布測定を継続できることを意味します。
※5 レイリー散乱
レイリー散乱は、光の波長よりも小さいサイズの粒子により発生し、その散乱光は入射光と周波数が同一です。光ファイバー中のレイリー散乱は、媒質中の密度揺らぎにより発生します。
※6 非弾性散乱
光の散乱のうち、散乱光の周波数が入射光に対して変化するもの。光ファイバー中で生じる散乱光では、ブリルアン散乱とラマン散乱が挙げられます。一方、レイリー散乱は、散乱光と入射光が同一の周波数となる弾性散乱です。
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