絶滅危惧種タマカイの採卵と人工ふ化に成功! 奄美海域では初の成果 安定採卵と種苗生産・完全養殖技術の確立をめざす
Digital PR Platform / 2024年9月13日 20時5分
近畿大学水産研究所奄美実験場(鹿児島県瀬戸内町)は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種とされているスズキ目ハタ科の魚「タマカイ」の研究を、平成27年(2015年)から行っています。
このたび、タマカイ9歳を親として、約23万尾の人工ふ化に成功しました。タマカイの人工ふ化は、国内では沖縄県水産海洋技術センタ―石垣支所(沖縄県石垣市)に次いで2例目であり、奄美海域では初、熱帯性である本種の繁殖としては最も高緯度海域での成功例となります。
【本件のポイント】
●絶滅危惧種タマカイの最も高緯度海域での採卵、人工ふ化に成功
●タマカイ精子の自給により、交雑魚「クエタマ」の持続的な生産が可能に
●天然資源保護に貢献するため、タマカイの人工種苗生産と完全養殖技術の確立をめざす
【研究の背景】
近畿大学水産研究所では、平成23年(2011年)に「クエ」(雌)と「タマカイ」(雄)の交雑魚「クエタマ」の作出に成功しました。幻の高級魚といわれるクエの淡白で上品な味わいがありながらクエよりも成長が早く、養殖魚として優良な品種であるという評価を得ています。
持続的なクエタマの生産にはタマカイの精子が不可欠ですが、研究のために用意したタマカイ親魚は平成27年(2015年)に台湾から導入したもので、成長による大型化に伴う扱いの難しさや、死亡による尾数減少により、新たな親魚の確保が必要となりました。
国内では、平成22年(2010年)に沖縄県水産海洋技術センター石垣支所が、タマカイの人工採卵とふ化飼育に成功していますが、これまでに安定的な採卵と初期飼育に関する技術は確立されていません。また、タマカイは熱帯性の魚であるため、沖縄よりも高緯度域である奄美大島での繁殖は困難であると考えられていました。しかし令和5年(2023年)、近畿大学水産研究所奄美実験場で養成しているタマカイ親魚の成熟調査を行ったところ、ホルモン誘発による繁殖の可能性が確認されたことから、採卵と人工ふ化に挑戦することになりました。
【本件の内容】
近畿大学水産研究所奄美実験場において、令和6年(2024年)7月18日に、奄美海域の海上網生簀で養成している9歳雌(約27kg)の催熟※を開始し、20日に雄の精子を利用して人工授精を行いました。その結果、約38万粒の採卵に成功し、翌21日に約23万尾のふ化仔魚を得ました。このうち約9万尾を飼育し、ふ化後47日目で約240尾(全長21~35mm)が生残しています(9月9日現在)。
近年、海水温の上昇が加速していますが、タマカイとクエタマは高水温に適した養殖魚種として成長が早く、陸上養殖魚種としても期待されています。国内産のタマカイから受精卵を採取できるようになったことで、優良養殖品種として認知が拡大しているクエタマの持続的な種苗生産が可能となりました。今後は、タマカイの安定採卵と種苗生産・完全養殖技術の開発を進め、持続的な養殖と天然資源の保護につなげます。
※卵や精子の形成に関与するホルモンなどを投与して、人為的に成熟を促進すること。
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