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高脂肪食による脂肪肝の発生を防ぎうる新たなメカニズムを解明

Digital PR Platform / 2024年9月24日 10時34分


<研究成果>
本研究では、PGDPsが欠損したマウス(GCGKOマウス)は、肝臓における脂肪のβ酸化・分解が低下しているにもかかわらず、肝臓の遊離脂肪酸(FFA)および中性脂肪の蓄積が抑えられ、脂肪組織の増加も抑制されました。これにより、PGDPsの欠如が高脂肪食による脂肪肝の発生を防ぐ可能性が示されました。さらに、GCGKOマウスでは十二指腸における脂質吸収に関連する遺伝子Cd36の発現が低下し、糞中のコレステロール量が増加していることから、腸管での脂質吸収が抑制され、脂肪組織重量増加や肝臓でのFFAや中性脂肪の蓄積が抑制されていることが示唆されました。またGCGKOマウスでは肝臓におけるCd36の発現の低下も見られ、PGDPsの欠損は肝臓でのFFA取り込みも減弱している可能性があります。
また、PGDPsの欠如マウスの腸内細菌ではパラバクテロイデスの増加やラクトバチルスの減少など肥満抵抗性に関与する腸内環境の変化を認めました。


<今後の展開>
今回の研究により、プログルカゴン由来ペプチド(PGDPs)の欠損が高脂肪食による脂肪肝や脂肪組織の増加を抑制することが明らかになりました。特に、腸管での脂質吸収の抑制がこのメカニズムの鍵となっていることが示唆され、PGDPsが脂質代謝において重要な調節因子であることが分かりました。グルカゴンには基礎代謝亢進作用と肝臓におけるβ酸化促進作用があり、GLP-1は摂食抑制作用と腸管からの脂質吸収抑制作用を有することから、現在グルカゴン/GLP-1受容体作動薬が新規の肥満・脂肪肝への創薬として期待されています。一方、GLP-2作用の遮断は腸管からの脂質吸収の抑制作用を有しますが著明なインスリン抵抗性を惹起し、脂肪肝を増悪することが報告されています。今回GLP-2作用の遮断に加えてグルカゴン作用を遮断するとインスリン感受性がよくなり、脂肪肝抵抗性を来したと考えられました。またPGDPs作用が欠損したマウスの腸内細菌を解析したところ、一部肥満抵抗性に関与する腸内細菌の変化を示しました。PGDPs作用の欠損が肥満・脂肪肝の治療標的となりうるか今後の検討課題です。

今後は、PGDPsが具体的にどのように腸での脂質吸収を制御しているかをさらに詳細に解明する必要があります。GCGKOマウスの表現型は腸管特異的PPARαの欠損と非常に類似しています。腸管での脂肪吸収に関わる他の因子や分子メカニズムとの相互作用を調査し、PGDPs欠損がどのように腸内環境や微生物叢に影響を与えるのかを明らかにすることが重要です。また、今回の実験は短期間(7日間)で行われたため、長期間にわたる高脂肪食の影響についても追跡し、PGDPs欠損が長期的な脂肪肝や代謝性疾患の予防にどのような影響を及ぼすかを調べることも有益です。
さらに、このPGDPs欠損モデルを用いた研究から得られた知見を基に、新たな治療法の開発も期待されます。PGDPsの調節をターゲットとした薬剤や栄養療法は、脂肪肝や肥満といった代謝性疾患の治療に応用できる可能性があります。特に、腸管での脂質吸収をコントロールするアプローチは、新しい治療戦略として有望です。
最終的には、この研究を基にヒトでの臨床応用を見据えた臨床研究を行い、PGDPsの調節を介した脂質代謝制御がヒトにおいても有効であるかどうかを検証することが今後の大きな課題となるでしょう。これにより、肥満や脂肪肝の発生を抑える新たな治療法の確立が期待されます。
将来的には、腸内環境をコントロールする素材であるプレバイオティクスなどを活用して膵・腸ホルモン分泌を制御することができれば肥満を効率的に抑制することが可能になるかもしれません。
手段の一つとして、本学で進めているプレバイオティクスを用いた補完治療が有用である可能性が高いと推察されます。

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