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有機半導体高分子を用いたニューロモルフィックマテリアル:分子一層のネットワークで脳の機能を模倣

Digital PR Platform / 2024年9月26日 14時5分

有機半導体高分子を用いたニューロモルフィックマテリアル:分子一層のネットワークで脳の機能を模倣



【発表のポイント】
● 液晶混合展開法と呼ばれる独自手法を用いることで、分子一層の厚みからなる有機半導体高分子のネットワーク構造を作製することに成功しました。
● 作製した有機半導体高分子ネットワークは、マテリアルリザバー素子に求められる三つの特性(非線形性・高次性・短期記憶)を示し、それらが二次元のネットワーク構造によって発現することを明らかにしました。
● 本研究は、用途に応じて自在に構造制御しうるニューロモルフィックマテリアルの新たな設計指針となり、マテリアルリザバー素子の高性能化する技術として期待できます。




【研究の概要】
立教大学理学部の永野 修作教授、石﨑 裕也助教、原 直希大学院生、松田 大海大学院生と山形大学理学部の松井 淳教授、名古屋大学未来社会創造機構の関 隆広特任教授らの研究グループは、水面を利用した独自技術である液晶混合展開法※1を用いることで、脳に見られる神経ネットワーク構造を模倣した導電性高分子の単分子膜ネットワークの作製とそのナノ構造(膜密度・積層構造・分子配向など)の制御に成功しました(図1)。このようにして作製した単分子膜ネットワークは、近年、脳型コンピューティングデバイス※2として注目を集めているマテリアルリザバー※3素子に必要な特性(非線形性・高次性・短期記憶など)を示し、その特性が二次元に広がったネットワーク状の伝導経路に由来することを初めて明らかにしました。本手法は、一般的に広く知られる様々な有機半導体高分子に適用することができる汎用的な手法であり、従来の構造制御がなされていないランダムなナノ構造を有する神経模倣材料 (ニューロモルフィックマテリアル)とは異なり、用途に応じて自在に構造制御しうるニューロモルフィックマテリアルの新たな設計指針となることが期待されます。本研究成果は、Wiley誌のAdvanced Electronic Materialsに掲載されました。


(添付:図1 液晶混合展開法のイメージ図. 通常は水面で凝集してしまうような有機半導体高分子であっても、両親媒性の低分子液晶とともに水面に展開することで、単分子膜を形成することができる。また、表面圧や積層数などを調整することで、膜密度や分子配向、幾何次元なども制御することができる。)


【研究の背景と発表内容】
近年、人工知能 (AI)技術の発展に伴い、Chat GPTに代表される生成AIや気象予測など、さまざまなサービスが急速に発展しています。一方、現在のAI技術はソフトウェアベースにより実現されており、莫大な計算コストや消費エネルギーの増加などが問題となっています。このような背景の中、低消費電力かつ高速な学習・演算技術が急務となり、生体の脳が行っている演算を模倣したリザバーコンピューティング※4が近年注目を集めています。なかでも、リザバー部位を物理的ハードウェアで実装し、材料そのものに演算を行わせるマテリアルリザバーは、素子構造が比較的単純であることや、低消費エネルギーでの高速な学習・演算が期待されることから特に近年高い関心を集めています。これまでに金属ナノ粒子や有機半導体材料、強誘電性材料など、さまざまな材料系においてマテリアルリザバー素子が報告されており、脳内の神経ネットワーク構造を模倣したネットワーク状の情報伝達経路や非線形の電気特性(高次性や短期記憶など)が重要であることが示唆されてきました。しかしながら、これまでに報告されてきたマテリアルリザバー素子は、ランダムなネットワーク構造が用いられており、その構造と素子特性との相関はいまだ不明瞭であるという課題がありました。

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