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食道がん患者における術前吸気筋トレーニングの効果を検証 横隔膜機能を改善し、術後呼吸器合併症予防に寄与する可能性を示唆

Digital PR Platform / 2024年10月7日 20時5分

食道がん患者における術前吸気筋トレーニングの効果を検証 横隔膜機能を改善し、術後呼吸器合併症予防に寄与する可能性を示唆



近畿大学病院(大阪府大阪狭山市)リハビリテーション部理学療法士 水澤裕貴、近畿大学医学部リハビリテーション医学教室臨床教授 東本有司、同外科学教室(上部消化管部門)主任教授 安田卓司を中心とする研究グループは、食道がんにおける術後呼吸器合併症を減らすための術前リハビリテーションの効果について研究しています。
近畿大学病院にて根治治療として食道摘出再建術を行う食道がん患者を対象に検証を行ったところ、術前の吸気筋トレーニングを行うことで横隔膜機能が改善し、術後の呼吸器合併症の発症率が低くなる傾向があることを明らかにしました。本研究成果は、食道がんにおける術後の呼吸器合併症予防のための術前リハビリテーション確立への貢献が期待されます。
本件に関する論文が、令和6年(2024年)9月16日(月・祝)に、国際的な外科および腫瘍学に関する研究を専門とする医学雑誌"Annals of Surgical Oncology"(アナルズ オブ サージカル オンコロジー)にオンライン掲載されました。




【本件のポイント】
●食道がんにおける、術後呼吸器合併症を予防するための吸気筋トレーニングの効果を検証
●食道摘出再建術を行う予定の食道がん患者を、吸気筋トレーニングと従来のトレーニングを行う2つの群に分けて、横隔膜の可動性と術後の呼吸器合併症の発症率を比較
●吸気筋トレーニングが従来のトレーニングより横隔膜機能を改善し、術後呼吸器合併症予防に寄与する可能性を示唆

【本件の背景】
食道がんは、飲酒や喫煙が主な原因で発症する疾患で、世界8大がん疾病とされています。令和2年(2020年)時点の国内の食道がんの患者数は約2万5千人で、男性が8割以上を占めており、40歳以上で罹患率が増加します。5年相対生存率は41.5%とされています。食道がんの初期症状として目立つ自覚症状はありませんが、進行してくると食事が胸でつかえることが多くなり、症状が重い場合は食事が取れず、過度の体重減少や低栄養状態となります。
食道がんの根治治療として、手術適応の場合には食道摘出再建術が行われますが、この手術は手術侵襲※1が大きく、呼吸筋や肺などの呼吸器にも侵襲が生じます。食道は胸の中央に位置し、肺や気管と直接接しているため、手術後2-3日目をピークに臓器の浮腫が強くなります。肺や気管が浮腫むと痰が増えますが、気管の粘膜も浮腫んでいるので痰が出しにくくなっています。そのときにしっかりと痰を喀出する力があれば肺炎にはならず、浮腫がとれて治癒に向かいますが、痰が出せないと肺の中が痰壺のようになり、肺炎を発症してしまいます。術後に肺炎などの呼吸器合併症を発症すると、食道がんの再発率が高くなり予後も悪くなるため、食道がんにおいては術後呼吸器合併症を予防する取り組みが重要となっています。従来、胸腹部手術における術後呼吸器合併症予防としてインセンティブスパイロメトリー※2という息を吸うときに抵抗がかからずに深呼吸を行うトレーニングの機器を用いていましたが、近年欧米では息を吸うときに抵抗をかけて、かつその抵抗の値を調整できる機器を用いた吸気筋トレーニングが用いられるようになっています。しかし、食道がんのような胸腹部手術の前に行う吸気筋トレーニングの効果検証として吸気筋の定量評価を行った研究はなく、吸気筋機能に対する効果は明らかにされていませんでした。

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