1属1種だと思われていた野生ランが、実は2種だった! ~ラン科イチヨウラン属の分類学的再検討~
Digital PR Platform / 2024年10月11日 14時5分
昭和大学の谷亀高広講師(富士山麓自然・生物研究所)、神戸大学の末次健司教授(大学院理学研究科)などの研究チームは、ラン科イチヨウラン属の分類学的再検討を行い、長らく1種と思われてきたイチヨウラン属は、実は2種から構成されることを明らかにしました。
ラン科イチヨウラン属は、イチヨウラン(Dactylostalix ringens)のみで構成される単型属とされていました。しかし研究結果から、かつてPergamena unifloraとして記載され、その後はイチヨウランと同種と扱われてきた個体群を、新たにDactylostalix uniflora(タカネイチヨウラン)として区別するのが妥当と判断しました。
ラン科は、全世界に25,000~30,000種から成る、被子植物の中でも最も大きなグループの一つとして知られ、日本にも約75属230種が自生しています。
本研究の対象であるラン科イチヨウラン属(Dactylostalix)は、Reichenbachによって1878年に立てられ、今日までに千島列島から、日本にかけて分布することが確認されています。本州中部では標高800m~2,400mの山地~亜高山帯の苔むした林床に自生し、山梨県下では5月~8月にかけて亜高山帯の森林を散策すると、本属植物の花に出会うことができます。
かつてFinet(1900)は、花がより小さく、がく片に黒紫色の斑点がない上、花弁の側裂片が小さいなど、花の形態的特徴がイチヨウラン(Dactylostalix ringens)(図1A)と異なる個体を見出しており、Pergamena uniflora(以下、P. uniflora)という名で記載していましたが、その後、P. unifloraはイチヨウランと同種として扱われるようになりました (Freudenstein 1994; Freudenstein et al. 2005)。
しかし、神戸大学、大阪府立大学、昭和大学、国立科学博物館、東北大学の研究者による共同研究の結果、P. unifloraをDactylostalix uniflora(タカネイチヨウラン:図1B)とし、分類上別種として再整理するのが妥当と判断しました。それは、上記にある形態的特徴に加え、ゲノムワイドマーカーを用い系統解析を行い、さらに一塩基多型(SNPs)に基づくNeighbor-Net networkにより解析した結果、2種が異なる進化の道筋をたどったことが明らかになったためです(図2A,B)。
また、イチヨウランは、富士山周辺では標高800m~2,200mの山地から亜高山帯に自生しますが、新たに別種として認識されたタカネイチヨウランは2,200m~2,400mの亜高山帯に自生。また、イチヨウランが5月上旬から開花するのに対し、タカネイチヨウランは7月以降に開花するなど、開花期も異なっています。富士山麓には2種とも自生しており、本研究のサンプルとして活用されています。
本研究により、長らく1種と思われてきたイチヨウラン属は、実は2種から構成されることが明らかになりました。
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