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機械学習法を用いて自閉スペクトラム症の世代に共通する脳機能結合の特徴を発見

Digital PR Platform / 2024年10月21日 14時5分



昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の板橋貴史講師(発達障害医療研究所/ 所長:太田晴久)らの研究グループは、国内の連携多施設で収集した成人自閉スペクトラム症(ASD)の安静状態における機能的結合のデータから、機械学習法を用いて、世代に共通の脳機能結合の特徴を捉えることに成功しました。
本研究結果は英科学誌の『Molecular Psychiatry』(2024年9月28日オンライン掲載)に掲載されました。




【研究の背景・目的】
 ASDは、遺伝的要因、環境的要因、性差など様々な要因が影響しているため、ASD特有の脳回路の特徴を明らかにすることは困難であると考えられてきました。とくに、発達期の要因が脳回路に与える影響は大きく、ASDは発達軌跡が定型発達者と違う可能性があるため、児童から成人に至る発達期に共通したASDの特徴を見出すことは困難でした。これまでASDの診断を脳回路から予測する分類器は開発されていましたが、異なる施設や異なる発達期のデータに対して一定以上の精度を示す分類器はありませんでした。
 本研究では、まず、国内の複数施設で収集された日本成人のfMRIデータ(総数730例)から施設間差を除去する調和法[注1]を適用しました。次に、機械学習手法を適用することにより、個人の脳回路に基づき定型発達者とASD当事者を判別する分類器を開発しました。さらに、開発された成人の分類器が、児童・青年期のデータにも適用可能かを検証しました。

【研究成果の概要】
 国内730例の機能的結合データを基に機械学習を用いて、ASD当事者と定型発達者を区別する分類器を構築し、訓練データセットでの精度はAUC=0.84[注2]でした。次に、この分類器の汎化性能を評価するために、欧米の施設で収集されたABIDEデータ(121例)[注3]およびAMEDプログラムのデータ(163例)に適用し、AUC=0.70〜0.78の精度で判別できることを確認しました。また、成人期の分類器が児童期および青年期のASDデータにも適用可能かどうかを検証するため、国外の児童期・青年期の研究参加者665例に対して分類器を適用し、AUC=0.66〜0.71の精度で判別できることが示されました。

 さらに、脳全体の機能的結合の中から、ASDの診断予測に貢献する141個の結合を特定しました。これらは、デフォルトモードネットワークや皮質下ネットワーク、前頭頭頂ネットワークといった重要な機能ネットワーク内およびネットワーク間の結合であり、ASDに関連する特徴的な脳回路を形成しています。また、141個の結合のうちいくつかは、自閉症診断観察検査(ADOS)の意思伝達・対人関係の症状と関連していることが示されました。加えて、141個の機能的結合が神経伝達物質であるドーパミン(D1、D2受容体)やセロトニンと関係することも明らかにされました。

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