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世界初、耳を塞がないのに周囲の騒音を低減できるオープンイヤー型ヘッドホン用広帯域ノイズキャンセリング技術 ~街中の雑踏やモビリティ内でも、耳を塞がずクリアな音が聞こえる快適なリスニング体験を実現~

Digital PR Platform / 2024年11月14日 15時9分

2.技術的な課題
 ヘッドホンで使われている騒音を低減する技術としては、能動騒音制御(ANC)と受動騒音制御(PNC: Passive Noise Control)の2つの方法があります。ANCはヘッドホンに内蔵された参照マイクで騒音を集音し、耳元で騒音が消えているかを判断する誤差マイクを用いて、騒音の逆位相信号を生成し、ヘッドホンから再生することで騒音を相殺します。特に、1,000 Hz以下の低周波を中心に減少させることができます。一方、PNCは、ヘッドホン自体の物理的な構造で耳を塞いで騒音を遮断します。特に、1,000 Hz以上の高周波を中心に減少させることができます。すでに広く一般に普及しているANCを搭載した密閉型ヘッドホンでは、ANCとPNCを組み合わせることで効果的な騒音の低減を実現しています。
 しかし、オープンイヤー型ヘッドホンは耳を塞ぐ構造がないため、高周波の騒音が耳にそのまま到達します。また、人間の聴覚特性としては 3,000 Hz 付近が敏感に聞こえるため、オープンイヤー型ヘッドホンにおいて聴感上で効果的な騒音の低減を実現するには、ANC技術で 1,000 Hz 以上の高周波の消音が必要となります。


[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2341/98955/650_372_2024111316510867345a6c69165.png


3.技術ポイント
 ANC技術を用いて1,000 Hz以上の騒音を低減するには、ANCシステムは参照マイクで集音した騒音から、騒音の逆位相信号が誤差マイク位置に到達するまでの処理を極低遅延(サブミリ秒単位)で実行する必要があります。特にヘッドホンの場合は、参照マイクや誤差マイク、打ち消し音を再生するスピーカーがヘッドホン本体に内蔵されているため、それらの距離は数cm程度となります。従って、ANCシステムは非常に高速な処理が求められるため、ANCシステムの遅延をできる限り小さくする必要があります。そこで、ANCシステムにおいて、
①音響的遅延
②機械的遅延
の2つの遅延要素を減らす技術を開発しました。①音響的遅延とは、音が発生源から目標位置に到達するまでの時間差です。音は空気中を約340メートル毎秒の速度で伝わりますが、この速度は光や電気信号と比べると非常に遅いです。従って、騒音の発生元と参照マイク、また、ヘッドホンに内蔵されたスピーカーユニットと誤差マイクが近くなるようにマイクを配置する新たな設計を確立し、音響的遅延を小さくしました。また、②機械的遅延とは、機器やヘッドホン内部の機械的な部品が動作する際に生じる遅れです。例えば、ヘッドホンに内蔵されているスピーカーユニットの振動板は、電気信号を受け取ってから実際に音を発生するまでの間には物理的な時間がかかります。そして、この遅延はスピーカーユニットの設計によって周波数帯域ごとに変わります。そこで本技術では、新たなハードウェア設計とソフトウェア処理により、周波数帯域ごとの機械的遅延を削減しました。ハードウェア設計では、スピーカーの位置と特性を新たに設計し、ソフトウェア処理では低遅延低演算量のフィルタ設計を行いました。さらに本技術は、音漏れを防ぐオープンイヤー型ヘッドホンの設計技術(※3)と組み合わせることで、消音信号を周囲に漏らさず、利用者の周囲で騒音が増えることを防いでいます。
 ①音響的遅延と②機械的遅延を削減した本技術によって、オープンイヤー型ヘッドホンにおけるANCの広帯域化を世界で初めて実現しました。飛行機内の騒音を用いて本技術を評価したところ、3,000 Hz付近まで低減することを確認しました。具体的には 1,000~3,000 Hz で最大 13.7 dB,平均 7.8dB の騒音抑圧を実現しています。

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