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都市の神聖な緑地が支える鳥類の多様性~神社仏閣・歴史公園に注目して観測~

Digital PR Platform / 2024年11月20日 14時5分

2. 研究内容と成果
 調査は東京都文京区に位置する神社仏閣(9地点)、歴史公園(3地点)、都市公園(12ヶ所)で実施しました。鳥類調査では、各地点に面積に応じてランダムに調査ポイントを設定し、各ポイントにて10分間、半径25メートル以内に出現または鳴いた鳥を記録する「ポイントセンサス調査」を行いました。この調査は、鳥類の繁殖期にあたる2023年5月から7月および越冬期の2023年12月から2024年2月にかけて、各調査ポイントで3回ずつ実施しました。この鳥類調査によって得られた約2000個体30種の鳥類データを、それらの生態から都市性鳥類、森林性鳥類、水辺性鳥類の3つのグループに分類し、聖地と都市公園でその多様性が異なるかどうかを解析しました。解析の結果、緑地のタイプごとに鳥類の出現パターンが異なることが分かり、特に神社仏閣では都市公園に比べて各地点に特有の鳥類が見られること、また、繁殖期の神社仏閣及び歴史公園では森林性の鳥類の個体数が、越冬期の神社仏閣では鳥類種数が、それぞれ都市公園よりも多いことが明らかになりました。さらに、植生調査を2023年9月から10月の間に行い、各調査ポイントの植被率*¹⁾、下層植生の豊富さ、樹木の胸高直径*²⁾、落葉性を測定し、植生構造を明らかにすることで、鳥類がどのような植生の影響を受けているかを解析しました。その結果、神社仏閣で個体数が多かった森林性鳥類は、下層植生が豊富で常緑樹が多いほど個体数も多くなることが分かり、聖地で鳥類の多様性を高めるメカニズムに関わることが示唆されました。
 本研究の結果から、都市の聖地では都市公園に比べて鳥類の多様性が高く、この多様性は植生構造に起因していることが示唆されました。一般的に都市公園などの緑地においては、防犯・安全の観点から見通しが良くなる植生管理が求められており、強い管理圧下にあると考えられます。本研究の結果を踏まえると、文化的価値や自然崇拝などの信仰的価値を併せ持つ聖地では相対的に弱い、粗放的な管理になった結果、複雑な植生を留め、鳥類の多様性を支えているというメカニズムが考えられました。以上から、都市部に位置する聖地の生物多様性保全上の価値及び、生物多様性が高まるメカニズムが新たに明らかになりました。

3. 今後の展開
 今回の調査は限られた期間で行われたことから、東京都文京区にある聖地を対象としましたが、今後は調査範囲を拡大し、都市化の程度の違いも考慮した聖地の価値の検証を目指します。さらに、継続的な調査のデータや過去の資料を活用することで、都市化の影響を時間的変化も考慮したうえで検討することを目指します。こうして都市の聖地の価値を再確認することで、OECM*³⁾等の保全地区として保全を進めていくなど、都市の生物多様性保全への貢献が期待されます。また、こうした文化的価値を併せ持つ聖地であっても、近年の都市化の脅威にさらされていることから、今後も継続的なモニタリングが必要であると考えられます。

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