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体毛に含まれるホルモンからツキノワグマの繁殖状態を評価できる?〜妊娠維持に関わるプロゲステロンに着目〜

Digital PR Platform / 2024年11月26日 14時5分

【研究手法】
 2008年から2019年の間に長野県東部で捕獲された175頭のツキノワグマから得られた210サンプルの体毛を用いた。特に、4月から9月の間に採取された体毛のみを研究に使用。体毛からホルモン抽出を行い、酵素免疫測定法により体毛1gあたりのプロゲステロン濃度を算出した。

【研究成果】
 体毛からプロゲステロンを測定した結果、成獣または幼獣雄や幼獣雌よりも、成獣雌の体毛プロゲステロン濃度は高いことがわかった(図1)。また、年齢や栄養状態は成獣雌の体毛プロゲステロン濃度に関係していなかったが、繁殖していた雌の体毛プロゲステロン濃度は繁殖していなかった雌よりも高いことが明らかになった(図2)。
 以上の結果から、体毛プロゲステロン濃度を測定することでツキノワグマ個体群の繁殖状態を評価できることが明らかになった。
 本研究により、野生動物保全や管理における体毛プロゲステロン解析手法の新たなる可能性を提示することができた。

【今後への期待】
 本研究成果は、単に体毛に含まれるプロゲステロンから繁殖を評価できることを示しただけではない。ツキノワグマではこれまで、ヘアトラップを用いて捕獲することなく体毛が採取されてきた。これらの体毛は遺伝解析に使用され、個体識別や個体数推定、集団遺伝学の調査に応用されている。このようなヘアトラップで採取された体毛を用いることで、非侵襲的にツキノワグマの繁殖状態をモニタリングすることも可能である。また、遺伝情報に加えて繁殖状況も明らかにすることで、個体群の増減傾向をより正確に評価できる可能性もある。
 この成果は、ツキノワグマの保護管理だけではなく、他の希少種や保全が求められる野生動物にも応用できる可能性があり、種を超えた広範な保護管理の基盤を築く一歩になることが期待される。

【論文情報】
・論文名: Reproductive health from hair: Validation and utility of hair progesterone analysis in the Asian black bear, Ursus thibetanus
(和訳)体毛で繁殖を診る:ツキノワグマにおける体毛プロゲステロン解析の有効性・有用性評価
・掲載雑誌名: Journal of Zoology(30 August 2024)
・著者: 嶌本樹¹、滝透維¹、熊木彩乃¹、本橋篤¹、玉谷宏夫²、大嶋元²、田中純平²、山本俊昭¹
 1 日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学科・応用部門・保全生物学研究分野
2 NPO法人ピッキオ
・DOI: https://doi.org/10.1111/jzo.13213


▼本件に関する問い合わせ先
研究推進課
住所:〒180-8602 東京都武蔵野市境南町1-7-1
TEL:0422-31-4151
FAX:0422-33-2094
メール:research@nvlu.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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