1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

【「悪は存在しない」評論】わたしたちに対して悪は“存在しない”と逆説的に問うている

映画.com / 2024年4月28日 10時30分

 「悪は存在しない」は、地方回帰を安易に描いたりしないし、巨悪に立ち向かうという類の物語でもない。地元住民に対する思慮が足りないためトラブルになるという、形を変えれば何処でも起こりうる物語なのだ。舞台となる水挽町は、戦後の農地改革で土地を持たない者たちの開拓用に与えられた地域だという設定。ある意味で、みんな“よそ者”だと説明する巧が「まだ誰も賛成でも反対でもない」と諭すように、この映画における<悪>は灰色の存在なのである。誰もが加害者の側にも被害者の側にもなり得るし、誰もが悪の側にも善の側にもなり得る。斯様な灰色の現実世界を描いた映画なのだと解せる。それゆえ、悪は“存在しない”が逆説的な意味を内包していることは言うまでもなく、社会を“灰色”たらしめるのは、悪しきことに対して見て見ぬふりをする、或いは、問題を先送りにする風潮に対して異議を唱えることさえない、私たちの姿勢にその根源があるのではないかと問うている。

(松崎健夫)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください