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「湖の女たち」原作者・吉田修一×監督&脚本・大森立嗣が対談 映画化へ向かった“縁”と“挑戦”とは?

映画.com / 2024年5月17日 9時0分

 吉田氏「もう一方の、佳代を演じた松本まりかさんは“湖”みたいな感じ。打ってもどこか響いてこなくて、ぬるっと引きずられていくような。彼女の持っているリズム感、演技、佇まい、それに台詞の口調から、なにからなにまでがこの映画を象徴する“湖”のように、映画の中にずっといてくれるんですよね。財前直見さん(松本郁子役)も本当にすさまじかった。映画を見終わって、まずはキャスティングの素晴らしさ、俳優さんたちや演出の力を感じました」

 それに対して、大森監督は「キャストもスタッフも琵琶湖に泊まり込みで撮影をしたのですが、特に北側の方は独特でした。湖の他には何もないような。小説と同じように、佳代の自宅の撮影で“川端”(かばた)を生活用水にしている民家をお借りできたのも、とても有意義だった」とロケーションの素晴らしさに助けられたことを付け加える。

 吉田氏も「『さよなら渓谷』は川で、今度は湖。僕も取材で琵琶湖の北のほうを回ったときに、本当によそ者を拒んでいるような不思議な雰囲気がありました。静かにこちらをじっと見つめてきて。でも、はっきり拒まれている感じがします。海はどこかにつながっていると思えるのですが、湖は閉じているんです。京都の隣という地理的な条件や歴史もあるし、物語が生まれるポテンシャルが高い」と語り、“湖”が持つ特殊性について言及している。

 福士演じる圭介と、松本が演じる佳代のインモラルな関係は「世間一般の言葉でいえば不倫。湖と同じで、彼らの関係はどこに行くこともないし、何も生み出さない。いわば“生産性のない関係”」だが、大森監督は「生産性とは別次元の、自分の存在を際立たせる行為というものがある。それが二人の間で繰り返される、SMとも何とも言えない奇妙な行為。人間という生物は経済的合理性だけでは生きていけない。生産性なんてなくたっていいんじゃないか」と語っている。

 吉田氏は「圭介と佳代という二人の関係と、どこにもつながっていない湖の、湖面の美しさがリンクしていた。二人の自慰のシーンとかを世間の人が美しいと言ってくれるかどうかはわからないですけど、僕はすごく美しいシーンばかりだと思っています。不倫だとか正義だとか道徳といったものは、まったく二人の眼中にはない。社会通念みたいなものが一切なくなっていった先に、彼らの関係の強さがある」と、物語の本質を語っている。

 “映画「湖の女たち」オリジナル・サウンドトラック/世武裕子”が、5月17日より順次配信開始。収録曲数は全15曲(品番:PCSP-05847/発売元:ポニーキャニオン)

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