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ピンク・フロイドの創始者で、後にドロップアウトしてしまった憎めない男の人生【映画.com編集長コラム】

映画.com / 2024年5月17日 13時0分

 しかし当時の私は、シド・バレットのことをほとんど知りません。ピンク・フロイドのファーストアルバム発売時に在席していたのは知っていますが、その後のシドに関するニュースと言えば、「どうやら行方不明状態らしい」とか、「激太りになっている姿を目撃された」などのネガティブなものばかり。世界で大ヒットを成し遂げたバンドが、わざわざアルバム1枚を使ってトリビュートする意味が全然ピンと来なかったんです。

 ところが今回この映画を見て、当時から現在に至るUKロックの記憶で、失われたピースがガチっとはまったのです。シド・バレットは、ピンク・フロイドの圧倒的なリーダーで、作詞・作曲・ステージ演出などのすべてを担っていたことが分かります。自ずと「シド・バレット、凄いヤツだったんじゃん!」というイメージが力強く湧き上がる。ですが、そのイメージはあんまり長続きしません。「凄いヤツ」から「ダメダメ男」への転落っぷりがまた凄まじいんです。

 映画の内容についてこれ以上語るのは止めておきます。どんどん暗くなってしまうから。しかし、創造的な支柱を失ったバンドが、その後大成功するというストーリーもまた珍しい。ピンク・フロイドは、楽曲の魅力もさることながら、ステージ演出の際だったユニークさでも人気を誇っていました。ツアーをやると世界中でソールドアウトになるバンドとしても有名でしたが、そのルーツをこの映画で垣間見ることができます。

 映画では、ピンク・フロイドの各メンバーや、アルバムのジャケットをデザインしていたヒプノシス(当時)の中心人物ストーム・トーガソンや、シドの交際相手だった女性たちが生前のシドについてたっぷり語っています。シドは、女性にめちゃめちゃモてていたことも分かります。

 UKロックの黄金時代を築いたひとりでありながら、その後シーンからドロップアウトしてしまったシド・バレット。こうして1本の映画になったという事実が非常に感慨深いです。彼の人生は「語られるべき人生」だったってことですからね。

(駒井尚文)

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