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【「マッドマックス フュリオサ」評論】勧善懲悪というだけでは割り切れない清濁併せ呑むような複雑さ

映画.com / 2024年6月2日 8時0分

 さらに、カメラそのものが動いてゆくというショットが、アクションの主体になっていることも重要な点。例えば、カメラを揺らすことでアクションの躍動感を表現するような手法は用いていないし、カットを細かく割ってリズムを生み出すような編集も用いていない。ズームを使わず、レンズ(カメラ本体)そのものが被写体に寄るというルールのもと、アクション場面のショットが構成されていることを窺わせる。ゆるやかな移動ショットと、被写体を画角の中心にとらえた構図は、これだけの激しいアクションを実践しながらも、映像が“見やすい”という理由なのだろう。

 とはいえ、フュリオサ、ディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)、イモータン・ジョー(ラッキー・ヒューム)、ジャック(トム・バーク)の4人が主要な人物となる「マッドマックス フュリオサ」は、単純明快な映画であるというわけでもない。時にフュリオサは、憎きディメンタスに助けられ、恨めしいイモータン・ジョーに守られ、彼らを血の繋がらない父親のように感じさせる場面があるからだ。それでいて、男には頼らないフュリオサの<強さ>との均衡が抜群なのである。また、ジャックは“マックスもどき”のような外見をしているのだが、内面の強さを感じさせるトム・バークの役作りが素晴らしく、悪が蔓延った世界における“灰色の存在”の象徴のようで、かつ勇猛果敢なのである。勧善懲悪というだけでは割り切れない、清濁併せ呑むような複雑さは、<物語>なるものを超越したこの映画の魅力の源。79歳を迎えてもなおキャリアハイを更新するジョージ・ミラー監督は、やはり偉大だ。

(松崎健夫)

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