【「アンダー・ユア・ベッド」評論】日本のホラー小説を韓国で映画化。DV夫から人妻を救うストーカーの純愛を描く
映画.com / 2024年6月8日 19時0分
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「アンダー・ユア・ベッド」は公開中 (C)2023, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED
1994年に純文学作家としてデビューした大石圭が、現在のようなホラー作家として活躍するきっかけになった2001年の同名ロングセラー小説「アンダー・ユア・ベッド」(角川ホラー文庫刊)、2度目の映画化。安里麻里監督、高良健吾と西川可奈子共演の19年版から趣を一転させ、本作は韓国でリメイク。ドラマ「新米史官ク・ヘリョン」のイ・ジフンと、元女性アイドルグループ出身のイ・ユヌが共演し、主要スタッフ・キャストはほぼ全員が韓国出身。監督は「うさぎドロップ」「蟹工船」のSABU。
友人も無く、家族からも離れ、誰からも忘れられて生活するジフン(イ・ジフン)は、過去に一度だけ、自分の名前を呼んでくれた級友の女性イェウン(イ・ユヌ)を忘れられずにいた。あるきっかけから再会を決意したジフンは人を使い、結婚した彼女が暮らす新居を突き止める。しかし、10年ぶりにすれ違った彼女は見る影もなく老け込み、ジフンのことを気付きもしなかった。ジフンは彼女の家が見渡せる物件に引っ越すと24時間体制で監視を開始、その結果イェウンが昼夜を問わず、夫のヒョンオ(シン・スハン)から凄まじい暴力と性加害を受けていることを知る。
具体的には書かないが、暴力と性描写の生々しさに驚く。レイティングは「R18+」で17歳以下は鑑賞不可。安里監督の日本版も劇場では「R18+」だったが、配信サイトで流通している素材は、2次市場向けに性描写を抑えた「R15+」版のようだ。筆者はこの日本版「R15+」を鑑賞したのだが、二つを比較すると今回の韓国版の方がはるかに激しく陰惨に感じた。
映画では主にジフンが中心となって展開していく。モノローグによって、孤独を受け入れた過程、イェウンに執着した理由、家に侵入した手口、彼女と夫ヒョンオの異常な夫婦生活、と言った事柄が、ジフンの目を通して語られる。ストーキングする異常者の行動に初めは嫌悪感を抱くものの、一途なイェウンへの情熱や、彼女を救い出そうと苦悶するピュアとも言える気持ちに、次第に共感してしまう観客も少なくないだろう。
一方、原作は被害者、加害者、傍観者それぞれの立ち位置から生い立ちや他者との関係が語られ、物語が進んでいく。そこでは各人の背景や思惑が絡み、本質はぼやけて違った見え方になる。これに加え先の読めない展開とともに、登場人物の二面性など、キャラクターへの深い理解を読者に促している。単一の視点による没入感か、複数による「羅生門」的な展開か、映画も小説もそれぞれの特徴が生かされている。
韓国繋がりか、丘の上のセレブな家、侵入者など「パラサイト 半地下の家族」への目配せもほのかに感じられ、いろんな楽しみができる1本だ。
(本田敬)
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