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黒沢清監督が選んだ“本当に恐ろしい”フランス映画上映、O・アサイヤス監督と対話 「蛇の道」との共通点は…

映画.com / 2024年6月12日 19時0分

 黒沢監督の友人であり、「蛇の道」原案、Jホラーの代表作として知られる「リング」(中田秀夫監督)の脚本を担当した高橋洋氏に鑑賞を勧めたそうで、「彼は古今東西の幽霊に通じているのですが、この映画を見ていなかったので勧めたら、『やられた!』とつぶやいていました。こんな恐ろしい映画を作ってくださってありがとうございました」と貴重な逸話も披露した。

 本作についてアサイヤス監督は、当初のアイディアは、現実的な物語だったと告白。「パリで満足ではない仕事をしながら自分を見失った若い女性が自分のアイデンティティを見つける中で、芸術や精神世界に近づいていく。そこでヒルマ・アフ・クリントを紹介できると思った。彼女の絵から、交霊術、この映画は見えない世界とのつながりに移っていった」と、抽象的絵画の先駆者として知られ、神秘主義者のスウェーデンの女性画家の存在が大きかったと明かす。

 黒沢監督と同様、ジャンル映画として、アメリカ映画から影響を受けているという一方で、「目に見えないものは悪、というように、不可視なものにかかわるアメリカ映画は機械的。しかし我々は見えない物は不可思議であり判別不能だが、私たちに恩恵を与えるものという態度で作りました。私自身見えないものに親しみを感じて、信じています。目に見えない存在に囲われていると信じているので、黒沢さんの映画が好きなのです」と語った。

 幽霊という見えないものをテーマにした二人のトークは盛り上がり、話題は撮影方法やその意図、主演スチュワートの俳優という枠を超えた仕事についてなど広範囲に及んだ。

 生きている人間の世界と死んだ人間の世界を描く本作をアサイヤス監督は「この映画は喪に服する映画。自分に向き合うと同時に亡くなってしまった人を考える時間です。彼女の心の旅路に寄り添うものの、その旅先にあるもの、死者の世界の扉を開けるのかも、心の中の問題です。喪に服するのは自分の内面の冒険の時間だと思うのです」と結論付ける。

 そして、「同じことを黒沢監督の『蛇の道』に感じました。ホラーやアクションなどジャンル映画の形を取りながらも、喪の映画だと思ったのです。人間の最も根源的な、子を失ったことの悲しみ。復讐と同時に、それが一人の感情から二人の感情に発展していくところが素晴らしいと思いました」と黒沢監督の最新作との共通点を挙げる。

 黒沢監督は、「僕は、フランスで生まれ、生活している方々の心の深いところは撮れないと思いました。ジャンルの規則にのっとった映画だったらできると思って、『蛇の道』を撮りました。娘が死んで喪に服している二人の物語、復讐は現代社会では犯罪です。主人公二人は娘の喪に服しつつ、犯罪者になっていきます。ハッピーな映画にはならず、普通の人間が犯罪者になる映画としました」と解説する。

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