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黒沢清監督「“リアリティ”という言葉ほど怪しい言葉はない」 教え子・濱口竜介監督と「蛇の道」を語る

映画.com / 2024年6月17日 19時0分

 さらに濱口監督が「最後の場面もすごく綺麗な光が差し込んでいますね」と話すと、黒沢監督は「(この場面も)全く何も照明を当てていないわけではないですが、自然の光を最大限に生かしています」と回答。濱口監督が「明確にこの映画にふさわしい光が入ってるっていう感じがあります」と応じる等、監督同士ならではの視点でトークを展開していく。

 続けて、濱口監督が「黒沢監督にとって“偶然”というのはどの程度大事なものなのでしょうか。偶然に頼るというよりも、黒沢監督は作り込んでいくスタンスなのかなと思ったのですが」と問いかけた。

黒沢監督「そんなに作り込んでないです。偶然、晴れてたら晴れてる。雨が降ったらそのままでいいんだと。今のデジタルの技術では、雨が降っていても晴れてるみたいに変えられるんです。ただ僕は、現場の偶然性を活かす方が好みなので、撮影時の現場の天候はなるべくいかす方向で、でも少しだけいじる、という感じで作っていったと思います」

 また、濱口監督が「進行させようと思っている物語に奉仕するかどうかよりも、現場で起きたことが1番信頼できる、現場でおきたことに従いたい、というのが基本なのでしょうか」と尋ねると、黒沢監督「映画とはなんだろう、という難しい質問ですね」とゆっくり言葉を選びながら、こう答えた。

黒沢監督「僕が古い人間だからなのかもしれませんが、撮影現場でおきたことは、一回一回が非常に貴重なものなので可能な限り大切に、という考えが染み付いてるんです。予算のないフィルムで撮影していた世代は、大体そうだったんです。フィルムで撮ったものは加工もできない、フィルムも勿体ないのでそう取り直しもできない。1回限りのフィルムに、映像として記録されたものは神聖であるという考えが、もう染みついてるんです」

 さらに濱口監督は柴咲コウ&ダミアン・ボナールの演技について「柴咲さんは、きっと勘のいい人なんだろうな、という感じがします。余計なことが一切なくその場にいて、威厳を持ってこの映画の中に存在している、と感じました。ダミアン・ボナールさんも、急に笑い出す場面は、狂気を感じました」と述懐した。

最後に「改めて私も未だに1人の生徒として伺いたい」と濱口監督は「“劇映画とリアリティ”というのはどう付き合っていけばいいんでしょうか」と質問を投げかけると、黒沢監督は「わりとどうでもいい(笑)」ときっぱり。

黒沢監督「あることを凄く変だという人がいれば、“あるある”と共感する人もいる。“リアリティ”という言葉ほど怪しい言葉はないんです。監督が信じる、ある種のリアリティみたいなものはやはりワンカットごとに追求して行くべきなんだろうと思います。それが、その映画の個性になっていくんじゃないでしょうか……また講義みたいになってしまった」

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