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トッド・ヘインズ監督からの挑戦状――「メイ・ディセンバー」大胆不敵な映画音楽の使い方

映画.com / 2024年6月19日 19時0分

トッド・ヘインズ監督からの挑戦状――「メイ・ディセンバー」大胆不敵な映画音楽の使い方

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 「キャロル」のトッド・ヘインズ最新作「メイ・ディセンバー ゆれる真実」が、7月12日から公開される。90年代に実際に起きた13歳少年と36歳女性のスキャンダル=メイ・ディセンバー事件”の真相を、さまざまな角度から見つめる心理ドラマ。物語を彩る“音楽”も強烈な存在感を放っており、ヘインズ監督らがこだわりを語っている。

 20年前、当時36歳の女性グレイシー(ジュリアン・ムーア)は、23歳年下の13歳の少年ジョーと運命的な恋に落ちるが、2人の関係は大きなスキャンダルとなり、連日タブロイド紙を賑わせる。グレイシーは未成年と関係をもったことで罪に問われて服役し、獄中でジョーとの間にできた子どもを出産。出所後に晴れて2人は結婚する。

 それから20年以上の月日が流れ、いまだ嫌がらせを受けることがあっても、なにごともなかったかのように幸せに過ごすグレイシーとジョー。そんな2人を題材にした映画が製作されることになり、グレイシー役を演じるハリウッド女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)が、役作りのリサーチのために彼らの近くにやってくる。

 「礼儀正しい人だといいけれど」。これからやってくる“ハリウッド女優”のエリザベスの態度を危惧しながら、グレイシーがおもてなしの準備をしているワンシーン。冷蔵庫の扉を開けると、突然仰々しい音楽が鳴り響く――。それは、ジョセフ・ロージーの映画「恋」(71)より、ミシェル・ルグランの楽曲の一節を編曲したものだ。

 冷蔵庫の中を見て、「ホットドッグが足りないわ」とつぶやく何の変哲のないシーンだが、まるでこれから起こる不穏な展開を予感させるようであり、その日常的な場面とはミスマッチな音楽で観客に強く意識づける。

 斬新な音楽の使い方に、完成したシーンを観たムーアも思わず笑ってしまったという。ヘインズ監督は、絶妙なバランスで笑いの要素を織り交ぜ、シーンと音楽に違和感をもたせることで観客の感情を弄ぶ。

 名作曲家ミシェル・ルグランのこの楽曲は、脚本を読んだ段階から、既にヘインズ監督の頭の中に存在していたようだ。本作の音楽を手掛けた作曲家のマーセロ・ザーボスは、「トッドは、音楽がストーリーの流れに完全に従う必要はないと考えていたので、これまでの映画音楽の慣習は無視されました」と説明。さらに、「この映画の音楽は大胆不敵です。これほど効果的に音楽を使用している映画はほかに思いつきません。通常の映画音楽は、観客を作品に優しく引き込み、誘導するものですが、この作品の音楽は、観客の胸ぐらを掴んで極上の心理戦へと引きずり込むのです」と、ほかに類を見ない手法を使い、刺激に満ちた本作の音楽の特性を明かす。

 このような激烈にドラマティックなメロディは、サスペンスを盛り上げるような場面以外に、冒頭のように一見平穏な場面にも度々鳴り響く。グレイシーが過去に起こした事件への伏線を示唆するのか、それとも、単なる日常に“過剰な意味づけや解釈”をしてしまうエリザベスや観客に対する皮肉なのか……。

 ヘインズ監督は、本作の映画音楽に対して「観客は殺人が起こるような犯罪ドラマを想像するかもしれない。そしてすぐにこの物語がどこに向かっていくのか、鋭い注意力で画面や演技を見つめることでしょう。音楽は、さらにその疑問を増幅させ続けますが、それはきっと楽しい映画体験になるはずです」と語っている。

 「メイ・ディセンバー ゆれる真実」は、7月12日からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。

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