【「墓泥棒と失われた女神」評論】太古の昔と現在、死者と生者の関係を詩的に見つめる
映画.com / 2024年7月21日 18時0分
去る6月の最終週、2年ぶりにボローニャの映画祭に行ってきたのだが、会期を同じくして、アリーチェとムタ・イマーゴという美術家ユニットによるインスタレーション“BAR LUNA”が開催されていた。「バー・ルナ(月のバー)」というのは「墓泥棒と失われた女神」の劇中で主人公たちがたむろするバーと同じ名前で、そう大きな規模ではなかったけれど、この映画の世界観を別の形で表現し、また、アリーチェの過去作を写真などで振り返る空間になっていた。会場は映画祭の毎晩のメインステージである市内最大の広場(多い時には5000人もの人が集まる)のすぐ近くの地下なのだが、まさに遺跡に潜るように階段をどんどん降りて会場に入ると、地下であるはずなのに天井にも壁にも星空が広がっているという演出。それはこの世とあの世、現在と太古が決して対立するものではなく、どちらもがどちらをも内包するという、この映画の哲学を体感させる仕掛けだった。その意味では、この作品が日本のお盆の時期に公開されるのは、とてもいいことだと思う。
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