名匠キム・ソンス、若かりし頃に直面した“恐怖”「銃声が聞こえた」 衝撃事件の映画化、経緯を明かす
映画.com / 2024年8月24日 10時0分
●一度オファーを断っていた シナリオを読んで「“戦慄”を覚えた」
――しかし一度はオファーを断ったとも聞きました。
2019年秋、制作会社(ハイブメディアコープ)の代表から本作「ソウルの春」のシナリオを受け取ったとき、私は体中の血液が逆流するような戦慄を覚えました、しかし、このストーリーは反乱軍が勝利した記録でもありますので、もしかしたら彼らの勝利を美化してしまうことにもなりかねない、と悩み、そのようなプレッシャーがあり最初はお断りしました。
――実際の事件をもとに、一部フィクションを交えながら描いていく上で気を付けた点は?
史実とフィクションのバランスは大いに悩みました、私自身、事実を伝えることが目標ではなく、この映画を通じて、その当時一体何があったのかを詳細に多くの方に知ってほしいという思いがありました。そして多くの方に知ってもらうためには、まずは映画を面白く観てもらう必要がある。それが監督の役割だと信じてこのプロジェクトに臨みました。
事実を大きく曲げることなく、それをいかに成し遂げるか、つまり、事件現場を目撃しているかのような没入感と臨場感をもって観客を楽しませなければならない。一方、本作を見終わった観客がこの歴史的事件により深い関心を持つような鑑賞後感を持ち帰ってほしい。長年仕事をしているスタッフたちにも相談をしながら、自問自答を繰り返しました。
●ファン・ジョンミン&チョン・ウソンのキャスティング秘話
――チョン・ドゥグァン保安司令官を演じたファン・ジョンミン、イ・テシン首都警備司令官を演じたチョン・ウソン、2人とも監督の「アシュラ」でタッグを組んだ、まさに韓国を代表する俳優です。ふたりのキャスティングについて教えてください。
今回のキャスティングについては、まずプロデューサーからチョン・ドゥグァン役をファン・ジョンミンさんにオファーしたいとの打診を受けました。もちろん素晴らしいアイデアだと思いましたし、同じ頃たまたまファン・ジョンミンさんが出演していた舞台「リチャード三世」を見まして、彼は稀代の悪人として描かれた主人公を本当に見事に演じきっていました。そこで「やはりあの役を演じられるのは彼しかいない!」と確信しました。
チョン・ウソンさんについては、イ・テシンというキャラクターが脚色を施した部分が多い人物なんです。現代の観客が感情移入しやすいように、チョン・ドゥグァンと対照的な落ち着きと静かな情熱を感じさせる人物として描かれています。ですから普段から紳士的な落ち着きをたたえたチョン・ウソンさんにこの役を演じてもらおうというのは自然の流れだったように思います。
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