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森谷雄のノンストップ映画道 「THE3名様」監督、「BISHU」プロデュースなど目白押し

映画.com / 2024年8月24日 10時0分

 森谷氏は、服部の現場での佇まいに驚きを禁じ得ないという。「これは『ミッドナイトスワン』で草なぎさんの現場への向き合い方を見ていたからなんでしょうね。撮影当時17歳でしたが、いかにしてこの役を自分が体現していくのか……みたいなことへのストイックさが半端なく、彼女は本物ですよ」と姿勢を称賛する。

 「キャリアが映画からスタートしたことも関係しているんでしょうね。彼女の持っているものが映画的だな……と感じる瞬間だらけで。そうすると、どうなるかというと、作り手側もスイッチが入るんです。そういう装置を草なぎさんもお持ちなんですが、樹咲ちゃんも同じだなと思うことが多々ありました」

 また、今作が発達障害を抱える少女と少年の姿を描くため、森谷氏は「そういう題材に向き合う覚悟」を製作サイドに求めたという。

 「プロデュースを依頼された際、こういう題材をやるのなら適当なことはできませんよとお伝えしました。僕の家族にそういう存在がいて、10年以上もその状況と向き合ってきたので嘘は描けません。家族としての苦労も経験してきているので、今回プロデューサーとして最も緊張感を持ってやったのはそこですね。僕の家族にもこの作品を観てもらわなければいけないし、面白おかしく作り物のようにはできない。

 僕は“特別視しない”ということを、スタッフの前で言いました。“かわいそう”と思って作ってはダメですと。逆なんだ、素晴らしい才能を持っているんだと思いながら作ってきた。きっと良い映画になると思うし、いま一番この映画を観てもらいたいのはうちの家族です」

 八面六臂の奮闘を続けながら、それをサラリとやってのける森谷氏は現在58歳。還暦が近づきつつあるが、2025年は独立してアットムービー設立から20年になる。

 「20年もやってきたんだから、アットムービー映画祭をやったら? と言われるんです。僕が理事を務めている(長野県の映画館)上田映劇で、1週間くらい上映すればいいのにと。こうして言われるまでそんなに意識してこなかったけれど、確かに何かやらないといけないかもしれませんね。あんまり振り返るのが好きではないし、自分の作ってきたものをまとめて映画祭にするという発想がなかった。面白いかもしれませんね」

 今年はカンヌ国際映画祭へひとりで視察に訪れるなど、旺盛な好奇心も衰え知らず。25年にはプロデュースした自信作「35年目のラブレター」(塚本連平監督)の公開も控える。このあと、どのような一手を打ち込もうとしているのか、今後も目を離すことができそうにない。

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