【「ぼくのお日さま」評論】何気なさを伴った緻密な構図が導く美麗な映像
映画.com / 2024年9月15日 8時0分
いっけんすると、フィギュアスケートを題材にしたスポーツ映画のように見える本作だが、競技に対する知名度とは裏腹にその作品例は意外と少ない。近年は「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」(2017)のようにCG技術を併用させた作品が生まれているとはいえ、演じる側のスケーティング技術に依るところが大きいジャンルであるからだ。そのため、「空から星が降ってくる」(1962)のイナ・バウァー、「アイス・キャッスル」(1978)のリン=ホリー・ジョンソン、「COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター」(2010)の西田美和など、現役あるいは人気のフィギュアスケーターが主役を演じてきたという経緯があり、5年もの歳月かけて撮影された倉本聰の初監督作「時計 Adieu l'Hiver」(1986)では、スケーター役を演じた中嶋朋子の技術が想定ほど向上しなかった為、撮影途中で物語の行方が変更されたという例まである。そういった点においても、今作はスケートを題材にした日本映画で成功した数少ない例のひとつだと言えるのではないか。
(松崎健夫)
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