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予備知識ゼロで「劇場版『オーバーロード』聖王国編」を見たら驚いた件【コラム/細野真宏の試写室日記】

映画.com / 2024年9月21日 7時0分

 とは言え、最近では「完全新作劇場版」だけでなく、「テレビアニメの先行公開」や「テレビアニメの総集編」もヒットするなど市民権を得ている状況があります。

 今のアニメーション映画のビジネスモデルはどのようになっているのでしょうか?

 まず、アニメーション作品が市民権を得ると、アニメーション作品に対する眼の肥えた視聴者が増えてくるので、制作陣はそれに応えるべく力を入れる構造があります。

 そのため、制作費は上がる傾向にあり、新たなビジネスモデルの構築が重要になるのです。

 同時に、制作陣が手間暇をかけて作り上げたテレビアニメ作品は、劇場クオリティーになっているものも少なくなく、その結果として「テレビアニメの先行公開」や「テレビアニメの総集編」という新たなビジネスモデルが生まれつつあるのです。

 そして、本作のような135分に及ぶ新作の大作映画は制作費だけで4億円から5億円規模でコストがかかります。

 これは、リクープするには、かなり高いハードルでしたが、ここに来て「日本のアニメーションの強さ」が新たなビジネスモデルを生み出してきています。

 それは、「配信」ビジネスなのです。

 もちろん「配信」はかつてもありましたが、今や日本のアニメーション作品は世界規模でパワーを持っています。

 そのため、製作段階において、世界規模で「配信権」の先売りができるようになってきていて、劇場公開前にすでにリクープができるように変わってきているのです!

 その結果、おそらく本作も劇場公開、放送、商品化などでの収益が、そのまま利益となってくるような新たなフェーズに入りつつあります。

 このような構造が定着すれば、本作のように力の入った本作的な映画作品が生まれやすくなり、ファンや映画業界などに喜ばしい状況になるわけです。

 本作は、予備知識ゼロで見ても面白かったことに驚きましたが、「あれ、ここで終わるのか」という終わり方にも少し驚きました。

 もちろん1本の映画としては十分にまとまっていたので問題はないのですが、まだまだ続きがあるような感じだったのです。

 そこで「続編もある?」と漠然と思っていましたが、本作「聖王国編」は、「テレビアニメ版の第4期の7話と8話の間に当たるエピソード」ということなので、必ずしも映画として続編があるわけではなさそうです。

 いずれにしても本作を機にテレビアニメ版の需要も上がることになるでしょうし、映画から入る人も増え、「オーバーロード」という作品の認知度はこれから上がっていくと思われます。

 実は、2017年に「オーバーロード」もテレビアニメ第1期の「劇場版総集編」を前編、後編として、映画館で公開しています。

 ただ、その時点では2017年2月「【前編】劇場版総集編 オーバーロード 不死者の王」は興行収入3900万円、3月「【後編】劇場版総集編 オーバーロード 漆黒の英雄」は興行収入3200万円で終わっています。

 果たして、新たなビジネスモデルが進む中、本作の興行収入がどこまで伸びるのか大いに注目したいと思います!

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