【「ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?」評論】“血と汗と涙”の結晶。“鉄のカーテン”をぶち破った伝説のライヴへ!
映画.com / 2024年9月29日 19時0分
1970年6月17日、破竹の勢いのバンドは“鉄のカーテン・ツアー”を敢行、初公演となるユーゴスラビアのザグレブの舞台に立つ。映画化も決定し、新人監督とクルーが同行して東欧での10公演が撮影された。しかし、共産圏の民衆が熱狂する様は国際問題につながると政治の思惑で“無かったこと”にされてしまう。
1970年9月、東欧から帰国したバンドを待っていたのは容赦ないバッシングの嵐だった。民主主義プロパガンダの尖兵となった彼らは、右派からは反戦・反体制の象徴とされ、左派からは国務省の回し者の烙印を押され、両派からの攻撃に晒された。
政権の思惑に翻弄され、半歩違いでアーカイブ化のトレンドに乗り遅れたBS&T。だが、鉄のカーテンをぶち破った“血と汗と涙”の結晶たるライヴを活写した本作には、メンバーが「自分の記憶の中でも最高のコンサートのひとつ」だと語る圧巻のワルシャワ公演が記録されている。
半世紀を経て発見されたフイルム5本(実際は18本あった)を元に作品を仕上げたジョン・シャインフェルド監督は、「この映画は音楽やBS&Tファンのためだけではなく、政治スリラーであり、驚くほど力強い共鳴と、現在世界で起こっていることとの類似性を持っている」と語っている。彼の脚本は高く評価され、2024年の全米脚本家組合賞を受賞している。
登り詰めたら落ちることだってある
それでも糸車は回り続ける
悩みごとを愚痴ったって始まらない
ペイントされたポニーに乗って糸車を回そうぜ 「スピニング・ホイール」より
瞬く間に時代の寵児となり、トップシーンから姿を消したバンドのオリジナルメンバーが当時を振り返る。政治とは無縁だった彼らがいかにして政治の餌食にされたのか。沈黙を続けた理由とは…。今でこそ笑い話だと悠然と語るヤツらはマジにカッコいい。創始者たちが姿を消したバンドはメンバー交代を繰り返しながら現在も活動を続けている。
(髙橋直樹)
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