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中国映画市場“2024年・夏休み興行”急激な低迷の理由は? 「エイリアン ロムルス」はノーカット公開→大ヒットに【アジア映画コラム】

映画.com / 2024年10月10日 13時0分

 このような問題が浮上することは、決して悪いことではありません。これからの中国映画市場をどのように改善すればいいのか――色々と考えることだらけです。ここから、今年の夏休みにおけるエピソードをいくつか紹介させていただきます。

 今年の夏休みの興収トップに君臨したのは、シェン・トンとマー・リーの“国民的コメディアンコンビ”が主演するコメディ「抓娃娃(じゅあわわ) 後継者養成計画」。中国で誰でも知っているシェン・トンとマー・リーは相変わらず抜群の安定感で、多くの観客を笑わせていました。33.2億元(約678.9億円)の興収は、2人の主演映画のなかでは歴代最高の数字となり、今年の中国映画年間興収ランキングでも暫定3位です。改めて、良質なコメディ映画は、中国映画市場では最もウェルカムとなるジャンルとなっているといえます。ちなみに「抓娃娃(じゅあわわ) 後継者養成計画」のほか、「怪盗グルーのミニオン超変身」「Escape From The 21st Century」なども健闘し、いわゆる「コメディ映画」だけで50億元以上の興収を稼ぎ出しています。

 一方、中国映画市場で根強い人気を誇る「サスペンス映画」は、去年の夏休みに「妻消えて」「ノー・モア・ベット 孤注」(2作ともNetflix配信中)がともに30億元超となった事態と比べると、やや寂しい結果。それでも、マレーシア人監督Sam Quahが、自作を中国を舞台にセルフリメイクした「默殺」が賛否両論を巻き起こしながら、10億元以上の興収を記録しています。

 そして、今年の夏休みに最も話題となった作品は、おそらく「エイリアン ロムルス」でしょう。上半期の中国映画市場は、昨年と同じく、ハリウッド作品の低迷が顕著でした。「ゴジラ×コング 新たなる帝国」を除き、「デューン 砂の惑星 PART2」「猿の惑星 キングダム」「シビル・ウォー アメリカ最後の日」「マッドマックス フュリオサ」などが上映されていますが、どれも話題にならず。ですが、夏休みに入ってから、洋画に対する注目度が少し上がりました。

 アニメ映画歴代興収1位に輝いた「インサイド・ヘッド2」をはじめ、「怪盗グルーのミニオン超変身」も好調。さらに「デッドプール&ウルヴァリン」もマーベル作品としては、久しぶりに中国でヒットとなりました。

 そして、8月中旬に「エイリアン ロムルス」が公開されたのですが、初日から爆発的人気だったんです。そもそも「エイリアン ロムルス」は、当初中国公開ができるのかと不安視されていました。上映が実現したとしても、カットされるだろうと思われていたのですが、まさかのノーカットで“全米と同時公開”。「このようなR指定の映画が、中国の劇場で見られるなんで信じられない。そして最高」と興奮した観客たちが、続々とSNSに感想を投稿していきました。

 「エイリアン ロムルス」は、現在も公開中ですが、興収はすでに7.83億元(約160億円)を記録。北米を超え、中国が「エイリアン ロムルス」にとっての“最大のマーケット”となっています。この“中国大ヒット”は、作品自体のクオリティの高さと、いままでになかった体験と深く関わっているでしょう。R指定作品は上映が制限されるため、中国では避けられがちでしたが、今後の政策によっては、映画市場の可能性が大きく左右されていくかもしれません。

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