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黒沢清監督が語る、恐怖の描き方のコツ 1番怖いのは「どういうシーンなのか、はっきりさせないこと」

映画.com / 2024年11月2日 19時0分

 そして、「現場では、自分の興味のあることには大いにこだわっていただき、興味のないことは思い切ってお任せする。それが監督の仕事だと思います」と、自身の言葉を熱心に聞く学生たちに向け、アドバイスをおくった。

 最後に、質疑応答も行われた。ある学生は、「映画を撮るなかで、役者の演技をカメラで撮る行為自体が、芝居の本質的なものを奪ってしまっていると思うことがあります。“芝居以上の何か”があるとしたら、それを捉える方法はあるのでしょうか?」と、質問を投げかけた。

 「ある脚本にセリフがあって、それを俳優が言う。当たり前のことですが、どんなに上手く言おうが、それを撮ると、芝居している人を撮っていることになります。一方で、自分の友人が雑談している風景を撮ると、『お芝居じゃない、生々しい、これこそ本物の人間だ』と一瞬思い、生の人間に惹かれていく。これはよくあることで、そこがスタート地点だと言って良いでしょう。芝居している人をただ撮っていても面白くない。一方で、友人が話しているところを撮っていても、あなたは面白いかもしれないですが、友人でも何でもないほかの人は面白くないんです。つまり、どちらもつまらないんです。『それをどう面白くしていくか』が映画です」

 「映画の歴史は、つまらないものを、あの手この手ですごく面白いものに変化させてきた。友人が話している光景も、実にうまくやれば、2時間くらい見ていられる面白いものになる。正解はありませんが、『撮っているそのものは面白いものではない』というところからスタートするのが、映画づくりの基本だと思います」

 続く学生の質問は、恐怖の描き方について。黒沢監督は「音は映像以上に、見ている人の不安を掻き立てるので、音の使い方はいつも気にします。1番気をつけているのは、怖いとか不穏だとかいうことを、はっきりさせない。ホラー映画を撮りたい方がいらっしゃったら、ひとつのコツだと思って聞いていただきたいんですが、怖くすることはそんなに難しくないんです。それこそ音でドカンとやったり、何かが飛び出してきたりしたら、誰でも怖いわけですね。1番見ていてイヤな感じがするのって、いま聞こえている音、いま映っている映像が怖いんだか怖くないんだか、何のために撮られているんだか、分からないという状態。これが1番怖いんです」「どういうシーンなのかはっきりさせないことが、観客が1番緊張する状況だと思います。怖がらせようと思ったら、あえて、あんまり怖がらせない方が怖いんです」と、解説していた。

 第37回東京国際映画祭は11月6日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催される。

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