ドミニカ共和国初の大人向けアニメーションはどのように作られたのか? 「オリビアと雲」監督が明かす【第37回東京国際映画祭】
映画.com / 2024年11月5日 13時0分
第37回東京国際映画祭のアニメーション部門で11月4日、ドミニカ共和国初の大人向けアニメーション「オリビアと雲」が上映され、監督・脚本・美術・撮影監督を務めたトーマス・ピカルド=エスピラットが東京・TOHOシネマズシャンテでのトークショーに登壇した。
本作は、オリビアとラモン、マウリシオとバーバラーという2組の男女を通じて愛の複雑さを描き出す。本作が初の長編作品だというトーマス監督は、「短編映画を長いこと作ってきましたが、ずっと長編にとりかかりたい、長いストーリーを扱いたいと思っていた。なかなか実現には至らなかったが、今回のアイデアが浮かび、これは長編になりうるのではないかと感じたので準備をはじめました」と長編に挑むことになった経緯を明かした。
本作の特徴のひとつに多彩なアニメーションスタイルが用いられていることがあり、同部門のプログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏は「この形式をとろうと思った理由は?」と質問を投げかける。これに対し、トーマス監督は、「実はアニメーションを学んだことがないんです」と明かし、ドミニカ共和国のアニメ事情や自身の経緯を交えながら、どのように制作を進めていったのかを説明した。
「私は美術学校を出ました。というのも、ドミニカ共和国はアニメ業界やアニメ文化が自国にないのです。だから学ぶことができなかったので、自己流でストップモーションやカットアウトといったものを手がけていました。この映画は10年かけて構想をまとめたような流れがあり、その間にさまざまな要素を入れることになりました」
構想期間の10年間のなかで、どのように本作の制作スタイルが出来上がっていったのか。トーマス監督は「アニメ業界はないが映画学校はあったので、私は映画学校で教えるなかで、学生にアニメーションの技術を教えていきました。そのうちに学生たちが私のチームに入って、徐々に技術を身に着けていきました。学生たちは、おのおの違う背景、違うテクニックを持っているので、それぞれ手がけるものが異なりましたが、本作のストーリーはさまざまな視点から見て描くものなので、異なるスタイルがあることがしっくりくると思いました」と解説した。
「私はシャイなので、コミュニケーションが苦手なんです」「アニメーションやストーリーを作ることで、人々と、皆さんともつながることができる」と語るトーマス監督。本作を通してさまざまな映画祭に参加するなかでも、人とのつながりを感じたという。「上映される時は客席に座り、皆さんがどこで笑うのか、この国だとここで笑うけど、ここでは笑わないなど、異なる反応を見るのが好きです。ですからいつも観客の皆さんと見るようにしていて、そのリアクションを見ることで『つながっている』と感じます」と笑顔で振り返っていた。
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