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息子への愛と現実逃避の夢の間で揺れる女性を描く「山逢いのホテルで」ジャンヌ・バリバールインタビュー

映画.com / 2024年11月28日 14時0分

――さまざまな解釈ができるラストシーンですが、ジャンヌさんはあの時のクローディーヌの感情をどう解釈して演じられたのでしょうか。また彼女がこれから進む道はどのようなものだと考えますか。

 難しいですね……。完全な孤独な道でしょうか。かといって、孤独は悲しいものではなく、内なる孤独を受け入れることが大切だというのは、精神分析的な意味合いからラカンが言っています。子供と一緒にいると、世話をしなければならないので、本来あるはずの孤独は隠れますよね。母親は、子供の存在によって孤独感を感じることから守られていたのかもしれないですが、それは幻想でしかない。人間というのは、やはり深いところで孤独を抱えていると思います。男であるとか、女であるとか、成熟しているとか、ティーンエイジャーであるとか関係なく、もっと深い人間の存在について、この作品は深掘りしているのではないでしょうか。普遍的な人間そのものを描いている作品と言えると思います。

――映画を楽しみにしている日本の観客に向けて最後に一言メッセージをいただけますか。

 例えば小津安二郎や成瀬巳喜男、田中絹代や溝口健二の作品のような日本のクラシック映画に登場する女性に代表されるように、日本映画には女性を通して社会を見るという特徴があると思います。私の世代やマキシム監督のような下の世代のシネフィルは、そういった面で日本映画からとても影響を受けています。世界中の他の国を見ても、日本映画以上に、女性の表面的で社会的な顔とは異なる別の顔を巧みに描いた映画はないのではないでしょうか。フランス映画において、シャンタル・アケルマンやルイス・ブニュエルの作品のような例外はありますが、女性の裏の顔に関心を示す監督はあまりいなかったように思います。女性が表に出さない顔を描いているという点で、今回の作品は日本映画的だと感じます。もちろん日本映画はそれだけの要素ではないですけどね(笑)。

 11月29日からシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。

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