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「劇映画 孤独のグルメ」から考える「俳優出資映画」が増えてきた理由【コラム/細野真宏の試写室日記】

映画.com / 2025年1月11日 9時0分

 であれば、メインの主人公の仕事についても自然に流れるように、もう少し踏み込んで表現してもいいのではと思ったりもするのですが、脚本の粗や時間の問題などもあるのか表現されていません。

 とは言え、本作の最大のテーマは「美味しい料理」であって、それ以外のリアリティーはそれほど重要ではない、とも言えるのかもしれません。

 さて、本作では主演の松重豊が製作の上位に名前を連ねていて、映画にそれなりに大きな出資をしていることが分かります。

 このところ「劇場版 ドクターX」主演の米倉涼子など、主演俳優が映画に出資している作品がトレンドになっているように感じます。

 いつからこのような状況が生まれてきているのでしょうか?

 1つの流れとしてあるのは、「テレビドラマの映画化」というキーワードが重要です。というのも、ヒットが見込みやすい人気の「テレビドラマの映画化」だと主演俳優の存在が作品にとって極めて大事なので、主演俳優の発言権が増すからです。

 「テレビドラマの映画化」で最も成功した作品は「踊る大捜査線」シリーズですが、実は第1弾の「踊る大捜査線 THE MOVIE」(1998年)はフジテレビの単独出資作品となっているのです。当時は誰も興行収入101億円もいけるなどとは想像していなかったのです。

 第2弾の興行収入173.5億円を記録した「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年)は、製作に、フジテレビに加えて「アイ・エヌ・ピー」という会社が加わりました。この会社は主演の織田裕二の関連会社なのです。

 このように、主演俳優の関連会社(所属事務所など)が出資をすることは以前からありましたが、ここ最近では新たな流れが出てきています。それは俳優の個人事務所化の流れです。

 かつて俳優は大きな事務所に所属し続ける傾向がありましたが、個人事務所を設立して独立する潮流ができつつあって、結果的に俳優自身が映画に出資する流れが生まれているわけです。

 その結果、「主演俳優のモチベーションは最大限に上がって精力的に頑張る」といった図式ができて、宣伝攻勢は一気に増えるような仕組みができあがるのです。

 このように見ていくと、基本的には現在の「俳優出資映画」の増加は製作サイドにとっても観客にもWin-Winの関係なのかもしれません。

 本作はフランスのパリでのロケも行われていますが、制作費的にフランスロケは厳しかったようです。そこで、日本航空とタイアップして、少人数であればロケができる状況を作り出し、最小人数でのロケを行なったりすることで実現しているのです。

 制作費は4億円、宣伝費などのP&A費が3億円と想定すると、映画だけでリクープするには興行収入14億円が目処になります。

 「料理映画」はそんなに多くないことに加えて成功例も少ないのですが、まさにテレビ東京の深夜ドラマの関連で「劇場版 きのう何食べた?」(2021年)があります。こちらは「男性同士の微笑ましい日常を描く」といった特徴のある作品ではありますが、タイトルのようにキチンとした「料理映画」でもあって、興行収入14.1億円を記録しています。

 また「グランメゾン・パリ」の方は想定通り興行収入30億円を狙えるような出だしになっていますが、こちらは「料理映画」でも“料理を作る”作品です。そのため、本作で“料理を食べる”作品のポテンシャルを見極めることができそうです。果たして想定の目標興行収入14億円にどこまで近付けるのか大いに注目したいと思います!

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