ハロー!プロジェクト新体制を書評家・大森望が語る「大きな転換期ではなく、新学期」

エンタメNEXT / 2019年9月1日 8時0分

6月にアンジュルムから和田彩花、Juice=Juiceから宮崎由加が卒業。その後、モーニング娘。’19に3名、アンジュルムに1名、Juice=Juiceに2名の計6名が加入し、グループに新たな彩りを加えるなど、激動の夏となったハロー!プロジェクト。新体制として各グループも動き出した今、ハロプロを愛する識者はこの動きをどう見ているのか? SF翻訳家・書評家であり『50代からのアイドル入門』を執筆するアイドルフリークでもある大森望氏に話を聞いた。
──大森さんがハロプロにハマったのは、どのへんからですか?

大森 コンサート自体は市井紗耶香卒業のモーニング娘。武道館(00年5月)が最初です。02年の横アリのハロコンにも行きました。だけど正直、当時はあんまりピンと来なかった。そこから10年以上空白があって、ネットで乃木坂46とかの動画をいろいろ漁っていたとき、『わがまま 気のまま 愛のジョーク』のMVに辿り着いたんです。このときのモーニング娘。は道重(さゆみ)-鞘師(里保)体制。EDM路線やフォーメーションダンスでニューモードに突入していたのが印象的でした。それで13年秋の中野サンプラザ公演を観に行ってドハマリしたんです。

──その2人も卒業しましたが、興味を失うことはなかった?

大森 そこがアイドルの面白いところですね。確かにメンバーはどんどん入れ替わって、当時とはほぼ別グループになっている。しかも、つんく♂がハロプロの総合プロデュースから外れてしまった。

──たとえばですが、秋元康先生抜きのAKB48や乃木坂46は考えられませんからね。

大森 そう。それまでは「ハロプロのアイデンティティって何?」と訊かれたら、やっぱりつんく♂でしょ、と言っていたのに、その前提が崩れてしまった。要するにこれって野球ファンみたいなものだと思うんですよね。たとえば20年阪神ファンをやっていれば、選手はもちろん監督だって変わるし、下手したら社長やオーナーも変わるかもしれない。それでもタイガースという球団の醸し出す空気感が好きで応援し続ける。ハロヲタって、やたら事務所に対して辛辣じゃないですか。英語のスペルを間違えると、鬼の首を取ったように喜んでいるし(笑)。そのへんも野球ファンと似ているんですよ。「ベンチがアホやから野球でけへん」じゃないけど、運営批判はヲタクの大好物だから。

──『ASAYAN』時代から、ハロプロの運営ってあえてファンが望むことと逆の方向を提示することがありますよね。02年のハローマゲドンが典型例ですが。

大森 あざとくファンの歓心を買うような真似はしないですね。目指しているところは、非常にきっちりしたエンターテインメントだと思うんです。たとえば道重は自分の卒業公演で足がつって動けなくなった。これは一種のアクシデントです。ただ、DVD化するときはその部分を極力目立たせないようにする。ドキュメンタリー的に売ろうとはしない。その前年の武道館でも、MCで道重が「ハゲ気味のみなさ~ん!」と語りかける場面が円盤ではカットされていたり。ただ、そういうきっちりした世界を見せようとしてもハプニングが必ず勃発する。そこが面白いんですね。

──リーダー2人の卒業と相次ぐ新メンバー加入で、ハロプロが大きく変わると予想されています。

大森 そもそも僕は今回の人事を大きな転換期だとは考えていないんですよ。せいぜい「新学期が始まって、新しい生徒が入ってきたな」くらいの感覚。和田彩花、宮崎由加の卒業、勝田里奈の卒業発表に関しても、前例から考えて「やっぱりなあ」という時期でしょうし。ヲタの間ではハロプロ“25歳定年説”がまことしやかに囁かれていますからね。僕自身、道重の卒業やBerryz工房の活動休止発表のときは、すごいショックを受けたんです。ところが周りの古参ハロヲタは、平然と受け止めていた。「年齢的に考えて当然でしょ」みたいな感じでね。つまり、気がついたらいつのまにか僕もその境地に達していたんです(笑)。逆に新しくJuice=Juiceのリーダーになった金澤朋子が今24歳だから、もし彼女が2年後もとどまるとしたら、その方が大事件です。

──なるほど。とはいえ、メンバーが変わることでグループの体質も変化する部分があるのでは?

大森 和田彩花がいなくなったアンジュルムは、確実に変わるでしょうね。ただ、それがカントリー・ガールズ解体くらいのインパクトがある話かといったら、そこまでではない。今年のハロプロ関連ニュースで一番大きなものは、鞘師がBABYMETALと一緒にステージに立ったことですよ。その次に大きなニュースは、鞘師がひなフェスで復活したこと(笑)。昨年11月に事務所を辞めたという発表があったから、「なぜこのタイミングで!? という衝撃は大きかった。実際、会場でも辻希美と加護亜依のW(ダブルユー)復活よりも鞘師への歓声の方が大きかったですし。

──モーニング娘。を去って3年半になりますが、ハロプロファンの間では辞めてなお存在感が増しているような気もします。

大森 ハロヲタの中には「ベビメタのバックダンサーかよ!」って都落ちのように捉える人も多いんです。でも、英国グラストンベリー・フェスティバルで鞘師が5万人の前で踊っている姿を観たら、それはもう胸熱ですよ。

──「海外でも通用する音楽を」というつんく♂さんの教えを、ある意味、鞘師さんが一番忠実に実践しているのかもしれないですね。

大森 今のハロプロはつんく♂濃度がどんどん薄まっていますからね。モーニング以外はなかなかつんく♂曲を歌えないし、和田彩花卒業ライブのラストも非つんく♂曲だった。それでいうと、今はアップアップガールズ(2)が一番恵まれているかも。4曲も続けてつんく♂にシングルを書いてもらえるわけですからね。2期メンバーの佐々木ほのかは、モーニング娘。加入当時の佐藤優樹を思わせる強烈なキャラだし、ハロヲタからアプガ(2)へ、けっこうファンが流れている印象がありますね。というか、僕が単独ライブに行きたいなと思っているんです(笑)。

──ハロプロの新人6名の中で注目メンバーは?

大森 アンジュルムの橋迫鈴ですね。彼女、ハロプロ研修生に入った頃は本当に小さかったんですよ。身長だけじゃなくパフォーマンス面も含めて、そこからの成長が目覚ましくて。アンジュルムに入ったことでのびのびやれると思います。一般からオーディションで入った2人は未知数ですが、Juice=Juiceの松永理愛と工藤由愛、モーニング娘。’19の山崎愛生(「崎」の右は「立」が正式表記)も実力は充分なので、あとはグループにどうマッチするか。夏のハロコンや秋ツアーが楽しみですね。ハロプロもここから新しいスタートになるので、新規でファンになるなら今がいいチャンスだと思いますよ。
▽大森 望(おおもり・のぞみ)
1961年2月2日生まれ、高知県出身。第34回日本SF大賞特別賞受賞のSF翻訳家であり、書評家。一方で『50代からのアイドル入門』(本の雑誌社)を執筆したアイドルフリーク。
Twitter: @nzm

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