元つばきファクトリー 岸本ゆめのが語る、卒業とソロ活動への想い「やっぱり軸は歌がいい」
エンタメNEXT / 2024年6月7日 6時10分
岸本ゆめの 撮影/荻原大志
昨年11月につばきファクトリー、ハロー!プロジェクトを卒業した岸本ゆめの。4月1日の誕生日に『BLUEMOON BLUES』をリリースしソロ活動を本格的にスタートした彼女に、卒業を決めたときのことやひとりで歌を届けることへの思い、また6月8日に開催される初めてのソロライブについて話を聞いた。
【写真】ソロアーティストとして歩みだした岸本ゆめの撮りおろしカット【10点】
──ソロで活動が本格的にスタートして、今の心境はいかがですか?
岸本 楽しいですね。今は作っていただいた曲をレコーディングしていくことが多いんですけど、スピーディにたくさんの曲を進行していて、ライブに向けて自分でも曲を作ってみたりして、とにかくたくさん新曲に触れているところです。
──楽曲はスタッフのみなさんとお話しながら作っていらっしゃるんですか?
岸本 そうですね。最初に出した『BLUEMOON BLUES』は自分から原案を送らせていただきましたし、2曲目の『ユーアーアイ』はアカシックの奥脇(達也)さんと理姫さんに作っていただいたんですけど、Zoomで近況を話して私というものを曲に取り入れていただいていて、そういうことは今までしたことがなかったのですごく新鮮で楽しいです。
グループから一人で音楽をやっていきたいと思った理由はいっぱいあるんですけど、その1つに「自分だからこそ歌える歌を歌いたい」という思いが大きくあって、今みたいな作り方のほうが曲にも自分が濃く出てくると思うので嬉しいなとも思います。
──改めてつばきファクトリー卒業のことについても伺いたいのですが、卒業を決断したときの心境は覚えていますか?
岸本 もともとソロで歌っていきたいという気持ちはあったけど、グループで活動していてそのタイミングは今じゃないなとずっと思っていたんです。
でも2022年に肺血栓塞栓症で活動を休止して入院していたときに、自分がいないつばきファクトリーのライブを観て「わ、カッコいい」と素直に思ったんですよね。だから「もう自分がいなくてもいいか」と。それは悲観的な考えじゃなくて、カッコよすぎるから私は一人の道に進ませてもらおうという気持ちでした。だから退院して今後の活動再開タイミングを会社の方と話し合う場のときには、もう卒業の話もしていたと思います。
──そもそも、岸本さんが歌いたいと思うようになったきっかけは何だったんでしょうか?
岸本 誰かに褒められていたわけじゃなかったんですけど、幼少期から歌うのが好きで、車の中やお風呂で大熱唱していました。ただ好きだったのが徐々に「これを人前でやりたい」と思うようになって、モーニング娘。を知って「ハロー!プロジェクトで歌いたい」と思うようになりました。自然な流れで、好きだったところから一生仕事として歌っていきたいと考えていくようになったのかなと思います。
──「一生の仕事にしたい」というのは一般の感覚にしてみると大きな決断に思えるのですが、明確な出来事があったわけではない?
岸本 決めたというより、それ以外を考えたことがないというのが正しいかもしれません。もうそういうものだと思って生きている感じです。「人に伝えるために歌っていきたいです」みたいなことを言っているんですけど、そんなに意識的なことじゃなくて、自分の中でそれしか選択肢がないんですよね。
──岸本さんはお喋りも上手ですし、最近はファッションの仕事もされていたり、いろんな可能性を持っている方だと思うのですが、ご自身は「歌しかない」と考えているんですね。
岸本 もちろん幅を広げることを考えるとファッションや喋るお仕事をしていきたい気持ちはあるんですけど、やっぱり軸は歌がいいなと思っています。ファッションだったら体型管理をするとか、ダンスは技術を磨いたり、喋ることは話の組み立てとか難しいなと感じることも悩むこともあるんですけど、歌に対してだけはそういうことが苦じゃないというか、全部を楽しめるから気負うものがまったくないんです。
だから自分にとって、すごく楽なものでもあるのかもしれないです。それに普段、人と喧嘩したとき以外に感情的になることってあんまりないと思うんですけど、歌はそれをやってもいいものというか(笑)、喋るよりも感情や気持ちを伝えやすいなと思います。
──卒業を決めた時点ではどういった形で活動したいか、どんな楽曲を歌いたいかなどは決めていたんですか?
岸本 ハロー!プロジェクトでは完成品をいただいて、それをどう表現するかというところをやってきたから、そうじゃなくて自分の考えを割合的に多く入れられるようなことをしたいと話していました。あと私は歌っているときに人間らしさというか、無様でもいいから素直な姿をもっと見せたいと思っていて。
アイドルとしてグループで曲を見せるときは、キレイな状態のものを届けることが基本だと思うんです。でもそれって、極端な言い方をすると嘘をついているというか。アイドルの美学としては正しいなと思うんですけど、やっぱり私はありのままでステージに立って歌いたいという気持ちもあって。だから、卒業後はブルースとかを歌いたいと相談当初から話していましたね。
──岸本さんが見せたいものとグループとして大切にする見せ方を両立するのは、難しいことでもあったんですね。
岸本 そうですね。私がやりたいようにやっちゃったらグループを壊すことになって、いろんな人に迷惑をかけちゃうので(笑)。それでもグループの中では自由にやらせてもらっていたほうだと思うので、ありがたかったなとも思っています。
その人ごとに違いますけど、生きていて顔がかわいい瞬間ってそんなに長い時間じゃないなと私は思うんですよ。表情をキメている瞬間ってそんなにないというか(笑)。なので、歌っているときに不細工でもいいのがいいなって思うんです。表情を作り込むみたいなことは苦手だったなりにアイドル時代にやったから、今後はもういいかなと思っています。
──昨年11月に開催された卒業コンサートについてもお聞きしたいのですが、岸本さんと山岸理子さんのハロプロ研修生時代からの歴史を辿る印象的な内容でしたよね。
岸本 まず私には、卒業は別に悲しいものじゃないという考えがあって。もちろんコンサートを観ながら泣くことは多々あったんですけど(笑)、でもみんな前向きに巣立っていくだけなので、私もその気持ちであの場に立ちました。あとは卒業の前に2ヶ月ほど活動を休んでしまったので、アイドルというものをやりきれてよかったというのはすごく思っています。
──達成感が大きかったんですね。
岸本 今回、私がハロー!プロジェクトに入ったときからレコーディングのディレクションをしてくださっていた山尾正人さんが「2人のハロー!プロジェクト人生を出すために」といろいろ考えてくださったライブだったんです。
私がお休みをしていて参加していないシングル曲にもパートを振って参加させてくれたり、ハロプロ研修生時代からグループを結成してのインディーズ時代、メジャーデビューから最近まで、アイドル人生のすべてをライブに詰め込んだ、愛を込めて考えてくださったものだったので、そこで締めくくれたなという感じがしました。
──あのとき披露したBerryz工房さんの楽曲は岸本さんが選んだんですか?
岸本 そうです!メドレーは候補を5、6曲くらい出してその中からバランスを見て選んでもらって、ソロで歌った曲は確定で送りましたね。河西(結心)と福田(真琳)と『サヨナラ激しき恋』を歌ったんですけど、あれ、カッコよかったですよね!?
正直、あの日は喉がすごく不調だったので、ユニゾンをセーブしていたんですよ。『サヨナラ激しき恋』も自分のソロ前のユニゾンは2人に任せる状況でやっていたんです。でもあの2人だから任せられたというのはすごくありました。リハーサルでは2人とも怒られたりしていたんですけど、河西と福田にこの曲を歌ってもらえてよかったし、これからのつばきを引っ張っていく人たちだと改めて思いました。
きっと会場で知らない方もいる曲選だったと思うんですけど、知らない方にBerryz工房さんの曲を知ってもらえたと思ったらラッキーだと思います。ベリヲタとして(笑)!
──最高の選曲でした! 卒業ライブを終えて、ソロへの準備は休まずにスタートしたんですか?
岸本 いや、結構ダラダラしていたと思いますね(笑)。11月12月は何かしていた記憶が特にないくらい。1月にYU-M加入を発表して、社長の山田さんから入社祝い&誕生日プレゼントとしてギターを買っていただきレッスンを始めたので、動き出したのは今年に入ってからです。
(取材・文/東海林その子)
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