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【何観る週末シネマ】インドでは珍しいストレートな”犬映画”『チャーリー』が感動を呼ぶ

エンタメNEXT / 2024年6月28日 18時9分

【何観る週末シネマ】インドでは珍しいストレートな”犬映画”『チャーリー』が感動を呼ぶ

(C) 2022 Paramvah Studios All Rights Reserved.

この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『チャーリー』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】”犬映画”『チャーリー』場面写真

〇ストーリー
過去の悲劇に囚われ、周囲との交流を拒絶して孤独に生きる男・ダルマが、悪徳ブリーダーの劣悪な環境から逃げ出してきたラブラドール・レトリーバーのチャーリーと出会い、反発しあいながら互いに愛情を育み、ともに生きる喜びを取り戻し、灰色だった世界が輝きだしていく……。

〇おすすめポイント
去年公開された『KGF』シリーズよって日本でも知られるようになった、南インドのカンナダ語映画。誰が呼んでいるのか知らないが”サンダルウッド”ともいわれている。

実際に『KGF』のヒットによって、カンナダ語映画業界は大きく変化しており、バイオレンス系やホラー系など、トーンの暗い作品が多く作られるようになり、タランティーノなどを意識した作品も多い。

例えぱ、モザイク処理はされていたものの、復讐に燃える少女が石で顔面を潰していく『ヴェーダ』(2022)などといった衝撃作もいくつか制作されていたりもする。

そんなカンナダ語映画のニューウェーブともいえる作品が今作『チャーリー』だ。

インドでは、動物が大きな役割を果たす映画は多くあり、キッズムービーの『Chillar Party』(2011)なども犬の役割が大きい。ところが動物が主体の作品というのは、東西南北インドであっても、あまり制作されていない。

もちろん全く無かったわけではない。アクシャイ・クマール主演のコメディ『It’s Entertainment』(2014)は、完全に犬映画であるが、あまり評判が良くなかったため、後に続くことがなかった。

ところが近年になって、タミル語映画『Naal Sekar』(2022)、去年公開された、宗教の違いによって結ばれない犬の駆け落ちを描いたマラヤーラム語映画『Valatty』なども公開されている。



子どもたちの間では、世界共通というべきか「パウ・パトロール」も人気で、インドでも劇場版が公開されているのと同時に、ディズニーやドリームワークス、イルミネーションといったアニメ映画も多く輸入されるようになった。動物モノの需要はそれなりにあることから、リアルもディフォルメも動物映画は今後増えていく傾向にある。

ただ、今作の場合は新型コロナの影響で2022年公開となったものの、制作自体は2018年頃から行われていて、トレンドをかなり先取したインド製”犬映画”ともいえるのだ。

というよりも今作があったからこそ、近年の犬映画は、制作に踏み切ったのかもしれない。

監督を務めたキランラージ・Kは、30代の若手監督であるが、実は10代の頃から映画制作に携わってきたベテラン。

今作も、いわゆるインド映画的な構造になっておらず、実際に制作陣もアメリカ映画的になることを意識して制作していたことからも、全体的に海外映画の影響を強く受けている監督ともいえるだろう。

主題歌の「Escape Song」もグラミー賞アーティストのロニー・パークによるものだし、ダルマとチャーリーがパラグライダーに乗るシーンでは、アメリカのアーティストWillyechの曲が使用されているのも、そう思わせる要因だ。

パンチャム・ジェーヴァやヴィジャイ・プラカーシュ、マドゥリ・セシャドリといった、南インド映画でお馴染みのアーティストも多く参加している。ロードムービーということもあり、その地の曲が、その地の言語になっているのも特徴的で、「O’Ga」のディティ・ロトリカルは、コンカニ語で歌っている。

そういったことも含めて、随所に音楽への拘りが伝わってくる作品であるのだが、音楽監督は、第96回アカデミー賞国際長編映画賞のインド代表に選出されたマラヤーラム語映画『2018』の音楽も手掛けたノビン・ポールだ。

ノビンいわく、コミカルなシーンの音楽は「トムとジェリー」を意識したとか。

わかりやすくエンタメが欧米化へ向かうボリウッドとは違って、南インドはドメスティックなものが多く、それが好まれているといわれているが、それは少し間違っていて、タイムラグがあるだけで、南インドも確実に欧米化に向かっている。

他国から注目されている、注目させたいという意識はどこの地域も強く、配信ドラマなどを観ても世界に通用するテーマを扱った意欲的な作品が多く、とくにタミルとカンナダ、マラヤーラムあたりは、あくまで現時点ではあるが、その傾向が強いように感じられる。

使用されている音楽は多いが、ダンスシーンとして切り取っているのではなく、サウンドトラック的に使用されており、ダルマとチャーリー、そして彼らを取り巻くキャラクターたちの心情の変化を知るための役割りを果たしている。

全体としては、アメリカ映画的かもしれないが、インターバル(休憩)を挟むことで物語のトーンが変化させるインド映画の手法のひとつを効果的に使用している。

前半では、無口で不器用なダルマと闇ブリーダーから逃げてきた野良ラブラドールレトリーバー、チャーリーとの出会いと、そこから生まれるハートフルな物語が描かれる一方で、後半になると、トーンは一変。ダルマとチャーリーの絆を確かめるロードムービーへと変化する。

その旅の行く着く先は、感動なしでは観ることができないだろう……。

(C) 2022 Paramvah Studios All Rights Reserved.

〇作品情報
監督・脚本:キランラージ・K
出演:チャーリー、ラクシット・シェッティ、サンギータ・シュリンゲーリ、ラージ・B・シェッティ、ダニシュ・サイト、ボビー・シンハーほか
原題:777 Charlie 2022年/インド/カンナダ語/カラー/シネスコ/164分/5.1ch
配給:インターフィルム
2024年6月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!!

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