噂の新団体「マリーゴールド」エース候補・天麗皇希の可能性、レスラーと俳優の二刀流
エンタメNEXT / 2024年7月9日 6時0分
![噂の新団体「マリーゴールド」エース候補・天麗皇希の可能性、レスラーと俳優の二刀流](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/entamenext/entamenext_33023_0-small.jpg)
皇希(天麗皇希)
5月20日に旗揚げ戦が行われた、ロッシー小川率いる女子プロレスの新団体「マリーゴールド」。個性あふれる選手が揃った中、エース候補と名高いのが天麗皇希。先日は、俳優としても舞台に立ち、活躍の幅を広げた。俳優とレスラーの二刀流を突き進む彼女について、元『週刊プロレス』の記者、小島和宏が筆を執った。
【写真】レスラーと俳優の二刀流・天麗皇希の舞台姿
今年5月、女子プロレス界に彗星のごとく出現した話題のニューヒロイン・天麗皇希(あまれい・こうき)。噂の新団体マリーゴールドの旗揚げ戦でデビューを果たすや、いきなり大注目の的となった。デビュー戦といっても、じつは経験値はある。
以前、彼女が所属していたアクトレスガールズでは、会場にリングを組んで、その上で闘う、という内容の公演を定期的におこなってきた。また提供試合という形で全日本プロレスの大会にも出場。皇希も歴史と伝統の王道マットに立ったことがあるのだ。
しかし、アクトレスガールズの運営サイドは「これは従来のプロレスとは別のモノ」という見解を示した。プロレスではない、と言われてしまったらプロレスマスコミはもう報じることはできない。結果、皇希の約2年間に渡るリングキャリアはプロレス歴にはカウントされず、多くのプロレスファンの目に触れないところでの活動となった。それがデビュー戦での衝撃につながったのだから、なにが幸いするのか本当にわからない。
では、プロレスラーとしてデビューするまでの彼女は「なにもの」だったのか?
それは「舞台女優」である。
実際、マリーゴールドでデビューを果たしたあとも、舞台出演との“二刀流”をこなしてきた。というか、本人もつい最近までプロレスデビューするとは思っていなかったので、4月、5月、6月と舞台の予定が決まってしまっており、それが旗揚げシリーズのスケジュールと見事に重なってしまったのだ。
こうなるとプロレスラー・天麗皇希を取材する者としては、俳優として彼女がどんな芝居をしているのか非常に気になるところ。筆者は先日『アイドルとプロレス』(太田出版)という本を出版したばかりだが、アイドルとの二刀流で活躍している選手のコンサートにも足を運び、どちらの活動もライブで目撃するように心がけている。そうすることでどちらか一方しか見ているだけではわからない光景がくっきりと浮かびあがってくることが多々、あるからだ。
というわけで、6月7日から9日まで池袋BASE THEATERにて上演されたAznet Produce公演『ギリシャ神話戦記テオデリア〜ひなげしの鎮魂歌〜』に行くことにした。その大千秋楽公演に足を運び、じっくりと俳優・皇希を見ておこう、と(ちなみに天麗皇希はリングネームであり、役者として活動するときの芸名は皇希、ということになる)。
物語はちょっと変わった学園モノ。とある学園での体育祭を描いたものなのだが、じつは学生たちはみんなギリシャ神話の世界から転生してきている、という設定。つまり、演者は全員、神話の世界と学生のふたつの役名を持っていることになる。ふたつの世界観が行ったり来たりするので、ボーッとしていたら、もう話の筋についていけなくなる。だって舞台上には20人の演者がいるのだ。それだけでも状況を把握するのが大変なのに、そこにギリシャ神話での名前が乗っかってくるから、実質、40人分の名前が舞台に飛び交うことになる。入口で写真入りの相関図が配られていて「?」と思ったが、たしかに相関図がなかったら、もう頭の中がしっちゃかめっちゃかになってしまう。
それと同時にハッと気づいた。これ、演者のほうがとてつもなく大変なことになっているんじゃないか、と。
単なるお芝居ではなく、オープニングとエンディングではダンスパフォーマンスがあり、劇中に数曲、歌うシーンもある。覚えることがありすぎるのだ。もっといえば、演者は基本、舞台に出ずっぱりになる。自分がメインのシーンではスポットライトが当たり、ステージのセンターに立てるが、関係のない場面だと、一歩下がって、気配を消さなくてはならない。もちろんお客さんの前には立っているわけで、なんらかの芝居はしているのだが、その変わりまくる立ち位置を覚えるだけでも大変だ。
ただ、舞台女優・皇希はその苦労を見事にかき消してくれた。
とにかく存在感がある。170㎝という長身はやはり画になるというか、舞台映えが半端ない。ボクシング部の男子生徒という役柄なので、劇中、ボクシングをするシーンもある。もちろん本当に殴り合うわけではなく、シャドーボクシングやストップモーションで見せていくのだが、そのパンチのフォームが見事すぎるというか、じつにカッコいい。ボクシング未経験の女性はパンチを綺麗に打つことが難しい印象があるのだが、そんな思いこみはパンチ一発で霧散した。
と同時に「この人は強い」という説得力がグッと増すので、見ている側がお芝居の世界に入り込みやすくなる。実際、彼女の強さが物語ではかなり重要な鍵となり、クライマックスシーンにも深く関わってくるので、この説得力はとても大事である。
もうひとつ特筆モノなのは皇希の「透明感」だ。ひょっとしたら、この人、舞台の上に実在しないのでは、と思ってしまうぐらいの透明さ。これもまた舞台女優としては大きな武器となる。もっと違う役柄を演じているところを見てみたい、と素直に思ってしまったぐらいである。
しかし、これだけの内容の舞台を昼夜の二回こなし、たった1日空けただけで、すぐにマリーゴールドの後楽園ホール大会に出場するのは、なかなかハードな話ではないか。普通に考えたら、千秋楽を終えたら、ホッとひと息つくし、数日は解放感に包まれるもの。そのあたりの切り替えが非常に気になる。
「私もそれが怖かったので、千秋楽が終わってもスイッチを切らなかったんです。その緊張感を続けたまま、翌日は道場でしっかりと練習をして、その次の日には後楽園ホールのリングに立っていました。じつをいうと4月からずっとスイッチを切らないまま活動してきたので、そこは大変でしたね」(天麗皇希)
千秋楽の2日後、6人タッグマッチに出場した彼女だったが、正直、ミスが目立った。デビューしたばかりだから、当たり前といえば当たり前なのだが、リングに登場しただけで皇希コールが沸き起こる期待感の高さの前では、わずかなミスも観客のガッカリ感を誘発しかねない。こちらは舞台を見ているから「あれだけのことをしていたんだから、いきなり試合は大変だよね」となるけれど、プロレスしか見ていない観客にはそんなことわからない。
もっとも、なんとなく乗り切ってしまうより、観客の前で躓きを見せたのは結果にはよかったな、と思う。6月の公演をもって、すでに決まっていた舞台はすべて終わったので、これで女優業は一旦、お休みにして、これからはしばらくプロレスに専念する、という。7月13日には両国国技館でのビッグマッチもきまっており、ここからがプロレスラー・天麗皇希の本領発揮ということになる。
女優としては大きな武器となる透明感だが、プロレスラーとしては逆に弱点になりがちだ。ときに泥臭く、ときに血なま臭く、そして人間臭く。そんな部分を見せていかないと、プロレスファンは感情移入しにくい。逆にリングでそういった生きざまを見せつけた彼女が、いつか舞台女優として転生したとき、どれだけスケールの大きな演技や表現をしてくれるのだろう、と考えるといまからワクワクする。その日のためにも、ぜひ彼女のドラマをリアルタイムで体感していただきたい。いままで誰も味わったことのない未来が、そこに待っているかもしれないのだーー。
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