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トランプ暗殺未遂事件から振り返る歴代の“大統領暗殺映画”有村昆が解説

エンタメNEXT / 2024年8月8日 18時47分

トランプ暗殺未遂事件から振り返る歴代の“大統領暗殺映画”有村昆が解説

『バンテージ・ポイント』

7月13日に発生した、ドナルド・トランプ前大統領が演説中に銃撃を受けたという銃撃事件は、世界中に衝撃を与えた。まるで映画のような現実が日々報道される中、映画評論家の有村昆に、大統領暗殺をモチーフにした映画作品をレコメンドしてもらった。

【関連写真】この映画をきっかけに実際の大統領暗殺未遂事件も

トランプ元大統領が演説中に狙撃され、まさに間一髪で銃弾が外れて休止に一生を得るという暗殺未遂事件が起こりました。

直後に撮られた、アメリカ国旗をバックに流血したトランプが拳を突き上げる写真を含めて、本当に映画のような事件でしたけど、僕がそう感じたのは、大統領や政府の要人を暗殺するシーンが出てくる映画というのは本当にたくさんあって、あの場面にどこか既視感があったからなんですね。

この事件の報道を観て、まず僕の頭に浮かんだのは2008年に公開された『バンテージ・ポイント』という作品です。

映画は、スペインのサラマンカという場所で開催されている国際サミットで、アメリカ大統領がスピーチを行うこととなり、その中継を担当するテレビスタッフたちの視点からはじまります。

大勢の観衆が集まる屋外の広場で大統領が演説をはじめると、どこからか銃声が鳴り響き、大統領が狙撃されて倒れてしまう。まさにトランプの事件とそっくりです。映画ではさらに演台に仕掛けられていた爆弾が爆発し、現場はパニックになってしまいます。

大統領は大丈夫なのか、犯人は誰なのか、と映画を観てるこちら側も何が起こっているのかわからなくなってしまいますが、ここで映画内の時間が狙撃直前まで巻き戻り、今度は大統領の警護についているシークレットサービスの視点で、この事件の一部始終が綴られていきます。
 
『バンテージ・ポイント』は、この大統領暗殺事件を別々の視点で何度も繰り返し、徐々にその真相に近づいていくという非常に凝った作りになっているんですね。

そのため登場人物も多いんですけど、デニス・クエイドが演じているのが大統領警護のSP。彼は以前に任務を失敗したという過去があって、久々の復帰となった日にこの暗殺事件が起きてしまうんです。

他にも地元の刑事、たまたまその場にいた旅行者、そして大統領自身の視点と移り変わっていき、本当に先が読めません。それでも非常にわかりやすく演出されていて、しかも上映時間90分にまとまっている。娯楽映画の見本のような作品です。

この映画のなかで、たまたま撮られていたビデオに映っていた怪しい動きをする人物が誰なのかというのがひとつのカギになってきます。

今回のトランプ暗殺未遂事件も、公式の中継カメラだけでなく、様々な人が現場を撮った映像や写真が流出しています。これがまた『バンテージ・ポイント』みたいだなと思ったんですよ。

今やみんなスマホを持ってる時代ですから、誰もが動画を撮れるし、屋根の上に人がいたとか、警備の人に注意したけど取り合ってもらえなかったとか、まさにそれぞれの視点があるんですね。

そして気になるのが、事件発生と同時にネットなどで飛び交った陰謀論的な視点です。

『バンテージ・ポイント』には、中盤にすべてをひっくり返すような展開が待っているんですけど、このような隠された真実や政府が国民を欺くような仕掛けというのは、現実にもあるんじゃないかと一部の人たちが感じているんですよね。



先日、公開になった『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』という映画は、アポロ計画で人類は月に行っていない、あの月面着陸映像はスタジオで撮った、という有名な陰謀論を下敷きにしています。映画では、ソビエトよりも先に月に人類が降り立つために、アメリカがその威信にかけて偽装するという展開なんですけど、アメリカという国はどこかでそういうことをやりそうな雰囲気があるんですよね。

今回の事件でいうと、トランプ大統領が再選するために、ひと芝居を打ってもおかしくないというのが陰謀論派の主張です。

とはいえ、現場では実際に亡くなってる方もいらっしゃいますし、犯人もその場で射殺されているので、軽く憶測でとらえていい話でないとは思います。でも、たぶんこの事件は映画化されるし、それがアメリカというエンターテインメント国家の奥深さでもあるんですよね。

ケネディ暗殺事件もオリバー・ストーン監督の『JFK』をはじめ、何度も映画化されてるじゃないですか。でも日本で安倍元総理暗殺事件を娯楽作として映画化できるかいえば、難しい。

悲惨な事件をドキュメンタリーとして追っていくのはまだしも、エンターテインメントとして成り立たせるのは、ハリウッド映画ならではだと思いますね。

実際に起きた事件を映画化するときに、犯人がどうやって撃ったとか、警備の盲点など、事件そのものを解明していくパターンもありますが、我々が知りたいのはトランプを撃った側の犯人の心情だと思うんですよね。

そこで見直したい映画が『タクシードライバー』。1976年公開、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の不朽の名作です。

ベトナム戦争帰りのトラヴィスという青年が、ニューヨークでタクシーの運転手をしています。彼は同僚からは嫌われ、不眠症に悩まされ、大都会の片隅で孤独を募らせていくんですね。

トラヴィスは、次期大統領候補の上院議員の選挙事務所で働く女性と知り合ってデートに誘うんですけど、いつものクセでポルノ映画に行ってしまって軽蔑されたりと、なにをやってもうまくいかない。

するとトラヴィスは逆恨みして、上院議員の暗殺を企てます。拳銃で武装して演説が行われる集会に向かうんですけど、シークレットサービスに警戒されて断念するんですね。その夜、たまたま関わった少女の売春婦から搾取してるヒモとトラブルになり、思わず撃ってしまう。さらに売春であくどく儲けている一味を皆殺しにしてしまいます。もはや無差別テロのようなものなんですが、悪人を殺して少女を救ったということでトラヴィスはヒーロー扱いされるんです。

この『タクシードライバー』は、1972年に起きたジョージ・ウォレス大統領候補狙撃事件からインスピレーションを得たといわれています。そして、この映画を観て影響されたジョン・ヒンクリーという男が、1981年にレーガン大統領暗殺未遂事件を起こしています。

現実の大統領暗殺事件に、なにかと因縁がある作品なんですね。
 
まず、人を殺そうとした暗殺犯は悪です。今回のトランプ暗殺未遂事件だって、狙撃した犯人が圧倒的に悪い。どんな理由があったにせよ、暴力に訴える行為、テロ行為は許されません。

ただ、2度とこういう事件を起こさないためにも、犯人が何を考えていたかは検証したほうがいい。その時に、この『タクシードライバー』のような映画がヒントになると思うんですよね。

トラヴィスが大統領候補を殺していたら、世紀の大犯罪人です。でも、売春宿のギャングを皆殺しにしたら英雄になった。これって紙一重だなと思うんですよ。



ホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー』も、そんな些細な行き違いを描いてます。売れない芸人がジョーカーと化してしまった理由が丹念に描かれているし、その境遇に同情できる部分もある。そう考えていくと、本当に悪いのは誰なんだろうということになるわけです。

僕らだって、生きていく中で、多少の不平不満はあるじゃないですか。だからといって誰かを暗殺しようとは思わないですけど、犯人はたまたま行動してしまっただけで、考えていることは自分たちと紙一重かもしれない。その銃弾を紙一重で避けたトランプもすごいんですけど。

もう一方の「もし」となりますが、これでトランプが暗殺されていたら、アメリカは大変なことになっていたでしょうね。場合によっては民主党と共和党の支持者で国民が完全に分断されて、内戦になっていたかもしれない。

こんど公開される『シビル・ウォー アメリカ最後の日』という映画では、このようなアメリカの分断と内戦になった場合にどうなるのかということがリアルにシミュレーションされています。

トランプさんは元気ですし、その後の大統領選の展開も早いので流されてしまいがちですが、世界が変わっていた可能性もある大事件ですから、改めて関連作を観て考え直してみるというのはいかがでしょうか。

【あわせて読む】東大卒アイドルの桜雪、トランプ大統領を斬る!! [仮面女子]

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