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選挙の面白さを伝える畠山理仁が見た泡沫候補の政策「江戸城再建、都民全員に3000万円配る」

エンタメNEXT / 2024年9月5日 6時0分

選挙の面白さを伝える畠山理仁が見た泡沫候補の政策「江戸城再建、都民全員に3000万円配る」

畠山理仁

格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ第8回。今回のテーマは、選挙と推し。選挙の面白さを伝えるフリーランスライター畠山理仁に話を聞いた。取材・文/雨宮処凛(前後編の前編)

【写真】畠山理仁私物のマイ投票箱、本人タスキ、自作の「選挙漫遊」ステッカー

「畠山理仁50歳。取材歴25年、平均睡眠時間2時間、選挙に取り憑かれた絶滅危惧種ライター」

この言葉は、23年11月に公開されたドキュメンタリー映画『NO選挙, NO LIFE』(監督・前田亜紀)のキャッチコピーである。

映画の主人公である畠山氏を、私は数年前から「選挙の風物詩」と勝手に名付けている。選挙と名のつくものが始まると、SNSなどで彼を見かけることが増えるからというのがその理由だ。そのたびに、「ああ、また選挙が始まったのだなぁ」という気分が込み上げる。

そんな畠山さんは選挙取材に対して自らに厳しすぎるルールを課している。

「記事にするには候補者全員に取材する」というものだ。国政選挙や都知事選ともなれば膨大な「泡沫候補」がいるわけで、その人たちにも一人一人話を聞くのである。時間もかかるしお金もかかる。そんなことを自らに課していること自体驚きだが、『NO選挙, NO LIFE』を見て驚かされるのは、泡沫候補の世界のカオスっぷりだ。

自らを「超能力者」と名乗る者がいれば、「トップガン政治」という謎のキーワードを掲げる者がいる。政党名もすごい。バレエの衣装を着た男性が掲げる「バレエ大好き党」、「炭を全国で作る党」などなど。スーパーマンの衣装に身をまとったおじさんなんかもいて、人間の「業の深さ」に圧倒される思いだ。

見ているだけで「こんな生き方もあるんだ」「ここまで自由でいいんだ」「ここまでハチャメャでいいんだ」と俄然、勇気がわいてくる。みんなタガが外れているけれど、その中でももっとも外れているのが畠山さんだ。なんたって選挙取材では赤字も多く、バイトまでしながら活動を続けているというではないか。しかも妻子あり。子どもは2人いるという。

何が彼をそこまで駆り立てるのか。

世の中には「選挙なんてつまらない」と思う人の方が多数派だろう。ということで、この道四半世紀の求道者が私財を投げ打ち、膨大な時間と労力をつぎ込んできた「推し」=選挙の魅力を聞いてみた。

畠山さんに話を聞いたのは8月はじめ。都知事選から一ヶ月の頃だったのだが、まだ余韻の中にいる畠山さんにまずはなぜ、「選挙」に興味を持ったのか聞いてみた。すると飛び出してきたのは、意外な人物名。

「きっかけは、大川興業の大川総裁です。98年から大川総裁が『週刊プレイボーイ』で政治の連載を始めたんですけど、その担当ライターになったんです」

そこから大川総裁とともに選挙取材に繰り出すようになり、その世界の潤沢さにハマっていく。

初期に注目したのは山口節生氏という、「インディーズ候補界のメジャーリーガー」。



選挙にはこれまで20回以上出ているものの、一度も当選経験はなし。選挙中、2000人キャパの大ホールを借りて個人演説会を開催するものの、客はゼロ人ということもあった。客席にいるのは畠山さんと大川総裁だけ。普通なら心が折れそうなものだが。

「メンタルがめちゃくちゃ強いんです。その上、話題が尽きなくて、いくらでも話せる。こんな選挙運動をしている人がいるんだ、とびっくりしました」

そんな山口氏だが、最近はお金の節約もあるのか(例えば都知事選に立候補すると供託金だけで300万円かかる)、「出馬表明をしてその記者会見をする」だけのことが多くなっているという。それが7回ほど続いたので、一部の選挙好きからは「出る出る詐欺」と言われているそうだ。

そんな泡沫候補を取材していくうちに、深みにハマっていった畠山さん。

もちろん都知事選挙も長らく取材してきたが、これまで多くの候補者が掲げてきた政策があるという。それは「江戸城再建」。

「私は99年から都知事選を本格的に取材しているのですが、その頃から『江戸城再建』はいろんな人が言っています。東京都のシンボルとして、観光の目玉にすると」

他に心に残る公約はあるだろうか。

「マック赤坂さんが都知事選に立候補した時には、『眉間に皺を寄せて歩いたら罰金3万円』という公約を掲げています。スマイル党なので、スマイルすることで世の中が明るくなる。厳しい顔をして歩いていると良くないと(笑)」

そうして最近のトレンドは「ベーシックインカム」。過去最多の56人が立候補した今回の都知事選でも複数人が掲げていたという。

「少なくとも3人が導入しようと言っていました。牛窪信雄さんという方が月額10万円、新藤伸夫さんという方が月額20万円、未来党の木宮光喜さんという方が月額24万円と言っていました。それが、同じ選挙で同じ政策をいろんな人が言っていると化学変化が起きてくるのも面白いんです。新藤さんの個人演説会に行ったら月額30万円と、20万円から値上がりしていました。『どうしたんですか』って聞いたら、『未来党の木宮さんが24万円で自分の20万円よりも多いからもっとあげなきゃと思って』とのことでした(笑)」

柔軟といえば柔軟だ。ちなみに「未来党」の公約は「徳政令」。「住宅ローンなどすべての利子付き借金を帳消しにする」というもの。

「財源は、トランプ大統領がディープステートから取り返した金塊だそうです。アメリカだけでなく、日本にもその一部があると。『その金塊、どこにあるんですか』と聞いたら、『みずほ銀行にあると聞いております』と木宮さんが真面目な顔で答える(笑)。それでベーシックインカムも賄えるということでした」

もし、この原稿を読んでいるみずほ銀行関係者がいたら、その「金塊」について教えてくれないものだろうか…。

ちなみにお金絡みの公約では、「一定の期間を過ぎると半額になる給付金」を配ることを掲げていた候補者もいるという。

「澤繁美さんという方です。都民1人あたり100万円のデジタル給付金を渡して、1ヶ月以内に使い切らないとお金の価値が50万円になるという『半減期つき貨幣制度』を提唱していました。そうすればみんながお金を使うので経済が回り続けるということでした」

一方、ベーシックインカムを20万円から30万円に「値上げ」した新藤さんは、別の値上げも敢行していた。



「新藤さんは『人生で一回、2000万円を投資の資金として都民一人一人に渡します』と言っていたんですが、途中から3000万円になりました(笑)。なんで3000万円か聞いたら、『医学部を卒業するまでに必要な金額がだいたい3000万円くらいと知った』と。お医者さんになりたいのにお金がなくて断念する人がいては良くないから、自己投資として3000万円を自分の教育資金として使えるようにということです」

都民全員に3000万円をくれるとなると、都民が1500万人だとしても…莫大な額である。

「財源はどうするんですかって聞いたら、『東京都はもらってない地方交付税をもらいます』と。あと、ふるさと納税もやりますとおっしゃったので、『返礼品は?』と聞いたら、『東京ばな奈かな? 』って(笑)」

それだけの財源を期待されるなんて、東京ばな奈にはちょっと荷が重すぎるのではないだろうか。

ちなみにここまで登場した今回の都知事選の候補者名、あなたは一人でも知っていただろうか? 私は全員、初耳だった。そんな泡沫候補の間でこれほどめくるめく世界が広がっていたとは。もっともっと都知事選を全力で楽しむべきだったと後悔してももう遅い。

【後編はこちら】選挙ライターが語る「あのお騒がせ知事&市長陣営の、見過ごせない独特なノリ」

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