生涯実食杯数2万杯超!ラーメン官僚が教える「90年代環七ラーメンブームの味が食べられるお店」
エンタメNEXT / 2024年9月21日 11時32分
下頭橋ラーメン(ときわ台)。かずあっきぃ氏がハマった「土佐っ子」(ときわ台)で修業した方が独立開業。その味がほぼそのままの形で味わえる貴重なお店。撮影/かずあっきぃ
日本全国のラーメン店の発掘と紹介をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンを食べ続け、生涯実食杯数は20,000杯超という日本屈指のラーメンフリーク、通称「ラーメン官僚」こと、かずあっきぃ氏。今回、日本におけるラーメンの歴史や文化、その進化を語り尽くす短期連載がスタートした。最初の3回では、首都圏のラーメンブームの走りである、「環七ラーメンブームとは、いったい何だったのか」をテーマに、当時の原風景を振り返る。(第3回)
【写真】下頭橋ラーメンの「ラーメン」
最後に、現在の環七のラーメン事情を総括しておきます。もちろん、今でも環七沿いには、数多くのラーメン店があります。ですが、環七でしか食べられないラーメンを出す店は、ほとんどありません。わざわざ「ラーメンを食べる」ために環七にまで足を運ぶ時代は、過ぎ去ったと言って良いでしょう。で、それは、環七沿いに限らず、都内で言えば、どのエリアについても同じことが言えるのではないかと思います。
「環七ラーメンブーム」をひと言で言い表すとすれば、それは「ラーメンの進化の最中に咲いた刹那の花火」だったのではないかと思います。
ブーム以前にもラーメン店はたくさんありましたし、いろんな人がラーメンを食べ、ラーメンを愛してきました。けれど、それがムーブメントに至ったことまではなかった。
もちろん、「環七のラーメン」がブームに沸いていた最中にも、例えば、荻窪には、東京醤油ラーメンの代表格である「春木屋」が、池袋には、つけ麺のレジェンドである「東池袋大勝軒」が盤石の地位を築き、古くからの常連さんなどは、めいめい、それらのお店へと通い舌鼓を打ってきました。
しかし、今までラーメンにそれほど関心を抱いていなかった人たちが、ラーメンを熱狂的に求めわざわざ食べにいくようになったのは、「環七ラーメンブーム」が初めてで、だからこその「ブーム」だったわけです。
なぜ、「ブーム」になるまでに至ったのか。振り返って考えれば、「環七ラーメンブーム」の主役級だった店舗がおしなべてエッジが利いたラーメンを出していたからだと思います。「なんでんかんでん」は、その当時いくつかの店舗が出していた「東京風豚骨ラーメン」から背を向け、あえて、本場九州の味を忠実に守った濃厚豚骨ラーメンを出しました。「土佐っ子」にしても、いま同系統の背脂チャッチャ系ラーメンを食べても、やっぱり美味いんですよね。今でも、たまに無性に食べたくなります。
では、いまどこで、環七のラーメンの代表格だった「なんでんかんでん」や「土佐っ子」の遺伝子を受け継ぐラーメンが食べられるかを紹介しておきます。
「なんでんかんでん」については、杉並区井草の「御天」や、足立区一ツ家の「田中商店」などで、その味の系統を受け継いだ1杯を食べることができます。「なんでんかんでん」そのものも、西新宿に店舗を構えていますね。
「土佐っ子」については、品川区大崎に本店を構える「らーめん平太周」が最も有名でしょうか。板橋区常盤台の「下頭橋ラーメン」は当時の「土佐っ子」のスタッフの独立店舗で、当時の味を最も忠実に再現できているような気がします。埼玉県鴻巣市の「じょっぱり」も「土佐っ子」をルーツとする店。時代の流れによって、あの頃の「土佐っ子」とは少しテイストは違っていますが、池袋には「土佐っ子」の屋号を掲げるお店も健在です。
当時の環七で食べられたラーメンは、それまでみんなが見知っていたノーマルなラーメンとはまるで異なる「別の食べ物」でした。「本格派九州豚骨」にせよ、「背脂チャッチャ系」にせよ、目指した路線を徹底的に貫き、とことんまで振り切ったラーメンでした。
環七のラーメンとは、戦後から連綿と続くラーメン文化の中で発生したある種の究極の進化形であり、それに惹きつけられた人々たちの熱狂が「環七ラーメンブーム」の正体だったのではないでしょうか。
構成/大泉りか
【1はこちら】年間700杯を食べ歩く男、ラーメン官僚が語る90年代「環七ラーメンブーム」熱狂の正体と原風景
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