朝ドラ『おむすび』初回は『虎に翼』超えも徐々に停滞…復活のカギは“ギャル・橋本環奈”
エンタメNEXT / 2024年10月12日 9時0分
写真◎NHK
NHK『連続テレビ小説』の第111作である橋本環奈主演『おむすび』が、9月30日からスタートした。初回の世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下=同)は16.8%で、24年前期の伊藤沙莉主演『虎に翼』の16.4%を上回った。また、Googleトレンドの『ウェブ検索』でも、『#虎に翼』と『#おむすび』を比べると、『#おむすび』初回が過去12ヶ月で最高値となり、これを100として、『#虎に翼』の第9週の83、第1週の79などいずれの数値も上回った(以下、ネタバレを含む)。
【別カット3点】『虎に翼』と『おむすび』のGoogleトレンドグラフ
朝ドラの初回は前作の最終回までの盛り上がりにも影響を受けるため、『おむすび』の好スタートは『虎に翼』の恩恵を受けているところもある。それでも初回から大きなインパクトを残せたのは、ドラマ・映画・舞台と女優として引っ張りだこで、ここ2年連続『NHK紅白歌合戦』の司会も大好評と、すっかり国民的人気者となった橋本の存在が大きいだろう。
ただ、第2週に突入すると、視聴率、ウェブ検索ともに落ち着いてきてしまった。初回から快進撃の続いた『虎に翼』と比較すると、早くも苦戦を強いられそうだが、これには2つの朝ドラヒロインへの、視聴者の共感度の違いが表れているように思う。
『虎に翼』のはじまりは昭和初期。伊藤演じる主人公・寅子が、女性や子どもなど弱い立場にある人の尊厳を守るため、女性初の弁護士へと邁進していく姿が描かれた。時代は違えど、現代にも通じる不条理や理不尽に直面した寅子は、視聴者の代わりとなって次々と“持つ側”“強い側”の人間に立ち向かっていく。そんな寅子の勇ましさに胸を打たれ、応援したくなった視聴者は多かっただろう。
一方、『おむすび』は2004年(平成16年)からスタートした。物語の全体としては、平成元年生まれのヒロイン・米田結が、栄養士として、人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”と銘打たれている。ただ、第1週から第2週までは、主に高校で書道を頑張るか、“伝説のギャル”の妹という理由で強引に勧誘されたギャルサークル『博多ギャル連合(ハギャレン)』の活動を頑張るか、という迷いが描かれた。
『虎に翼』と比べるとずっと現代に近い時代において、等身大の高校生として、部活か勉強か、友情か恋かなど、視聴者にとっても分かりやすい迷いや葛藤はいくらでも存在するのだが、結のそれはあまりに特徴的すぎる。“伝説のギャル”の妹として、時代遅れとなったギャル活動を強いられた経験のある人はほぼいないだろう。視聴者が感情移入したり、結を応援したくなりやすい状況にはまだなっていない。
ただ、重厚な雰囲気のあった『虎に翼』に対して、ノリが軽いともされている『おむすび』だが、ここまでで今後シリアスな展開を暗示するシーンはいくつもあった。結の家族は神戸で阪神・淡路大震災を経験し、現在の物語の舞台である福岡県・糸島に移住している。結が幼心に傷を負ったであろうことはもちろん、父親も移住により理容師を諦めた描写がある。また、“伝説のギャル”だった結の姉も震災にまつわる事情があって糸島から上京したようだ。その結の姉の起こしてきた騒動によって、結の家族関係に大きな亀裂が生じてきたことなど、震災が米田家に深く関わっていることが示唆されてきた。
さらに、結を強引に勧誘するギャルも、貧困家庭でスナック菓子で食いつないでいる子や、逆にお金はあるが愛情がない家庭環境にある子など、それぞれ事情を抱えているようだ。
公式サイトには、結が「どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”」を胸に、激動の平成・令和をパワフルに突き進むとある。ギャルは派手な見た目で偏見を持たれがちだが、心に葛藤を抱えながらも一本筋が通っていて向上心があり、優しい子も実は多い。結はハギャレンのギャルそれぞれが持つ苦しみに触れ、それでもなお前向きに明るく活動する彼女達のマインドに引っ張られ、外見がどうであれギャルとして逞しく成長するのだろう。
過去に体験した震災に加え、2011年に起こる震災も日本に暗い影を落とすことになるが、結が大人になり、栄養士となる過程でいかにギャルマインドで乗り越えていくのか。その心の機微を繊細に描くことが出来たなら、視聴者がヒロイン・結に感情移入し、『おむすび』が朝に欠かせない存在になるのではないだろうか。
【あわせて読む】『おむすび』ルーリーがハギャレンを守りたい理由? 明かされた家庭事情に「心配」「寂しそう」
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