クロちゃん×小田原ドラゴン「友達を亡くすということ」【2】“愛すべきクズ”と過ごした青春時代と絶縁
エンタメNEXT / 2024年11月18日 6時1分
クロちゃん 撮影/松山勇樹
安田大サーカス・クロちゃんのキャバクラ仲間であり、漫画家・小田原ドラゴンの作品にもしばしば登場する石川キンテツさんが亡くなった。そこで故人を偲ぶ追悼対談をセッティングしたところ、2人は初対面にもかかわらず冒頭からヒートアップ。“愛すべきクズキャラ”としてニッチな人気を誇ったキンテツさんのエピソードが次々に明かされると同時に、青春という名の季節の狂騒と儚さも浮き彫りになる。(前中後編の中編)
【前編はこちら】クロちゃん・小田原ドラゴン初対談「友達を亡くすということ」共通の友人への鎮魂歌
【写真】小田原ドラゴンが描いた石川キンテツのイラスト
──クロちゃんはここ3、4年前まで親から仕送りをもらっており、そのことで「クズすぎる!」と世間から叩かれています。それでいうと、石川キンテツさんも親からの仕送りでキャバクラ遊びをしていたようですね。
クロちゃん 『週刊少年サンデー』(小学館)関連の仕事で稼いでいたことは知っていたから、そのへんは素直にすごいと思っていたんですよ。ライターとして優秀なんだなって。だから親から仕送りもらっているというのを知ったのも、後々になってからなんです。当時は「クロちゃん、さすがによくないですよ。いい年して親から仕送りしてもらうなんて」とかキャバ嬢の前で説教されましたからね。今思うと「どの口が言うんだ!」ってゾッとしますけど(笑)。
──クロちゃんと瓜二つじゃないですか! 同族嫌悪だったんじゃないですか?
クロちゃん そんなこと絶対にないしん!
小田原 ところでクロちゃんは、どういった経緯でキンテツと絶縁したんですか?
クロちゃん いくつか要因はあるんですけど、やっぱり大きいのはドラゴン先生と同じで仕事関係ですね。サンミュージックのマネージャーで大関隆之さんという方がいるんですけど、彼は僕と同じようにキンテツと仲がよくて、僕と同じタイミングでキンテツと絶縁したんです。
──大関さんはクロちゃんのSNSによく登場する方ですよね。ワンワンニャンニャンの菊地優志さん、元AKB48の高橋みなみさんと並んで“クロちゃん三銃士”と名付けているようですが。
小田原 “一緒に絶縁”というのはどういうことですか?
クロちゃん だんだんキンテツの仕事に対する不真面目な態度が目につくようになって、そのくせ「ラジオ局でポッドキャストをやるから、その件をクロちゃんのほうからツイートしてほしい」とか頼んできたんですね。でも、今のキンテツの感じだと俺は応援する気になれないなと思いまして。「ちょっと1回だけ自分でやってみなよ」って突き放したんです。
──目を覚ましてほしかった?
クロちゃん そう。やっぱり俺も仲良くしたかったですからね。だけどキンテツは「オラにちょっとだけ力を貸してくれ~」って『ドラゴンボール』で元気玉を集めるようなテンションでLINEをしてきたので、それを見た瞬間、もう無理だなって思いました。
──こう見えてクロちゃんって仕事には全力で取り組みますからね。
クロちゃん だから俺と大関さんとキンテツの3人でメシ会をして、「今のままのキンテツだったら、うちらはちょっとつき合えない。とりあえず1人でやってみて」と伝えたんです。結果的には、それが最後になってしまったんですけどね……。
小田原 まぁでもクロちゃんの気持ちはわかりますよ。
クロちゃん 結局、俺と大関さんがキンテツに言いたかったのは「頑張らないといけないよ」ってことなんです。でも、本人にどれくらい伝わっていたのか……。ドラゴン先生は、キンテツが地元・大阪に一時期戻っていたことは知っていました?
小田原 ライターを辞めて、お父さんの会社を手伝うという話でしたよね。
クロちゃん ええ。ですから東京を離れる直前に、思い出作りとしてキンテツと俺と大関さんの3人で旅行へ行ったんです。それなのに、あいつは目的地の小田原に着いてからもずっとパソコンを開いて仕事をしていたんですよね。さすがにうちらも「お前、何やってるの? お前のために来てるのに」と注意したんですけど、「いや、これ終わらせなあかんねん」と……。「終わらせてくるって言ってじゃん!」って一気に険悪な雰囲気になりました。
小田原 あ~あ(苦笑)。
クロちゃん 引っ越し自体もキンテツは何も準備しなかったものだから、慌てて大関さんの車で荷物を運んだりさせられたりしたんですけどね。とにかくそれで一度は大阪に戻ったわけです。当分は会えないだろうからさすがに少し寂しく感じたんですけど、あっさり半年後には東京に戻ってきたんですよね。本当に意味がわからないですよ!
──「3人での旅行は何だったんだ?」って話になりますよね。
クロちゃん 本当にそう!
──ただ、これだけ文句を言いながらも一緒にいたわけですから、人間として評価すべき点も多かったんじゃないですか?
小田原 相手の懐にスッと入ってくるのがうまかったんですよね。妙に憎めないところがあって。絶縁しているときですら、何年かしたら自然な感じで連絡してきたりするし。
クロちゃん あとサブカル系のライターをやっていたこともあって、トレンドには明るかったです。「ここのスイーツが美味しい」「このお店はデートに使える」といった情報は意外にキンテツから教わることも多かった。男2人でプラネタリウムバーに行ったこともありますし。
──今はアイドル関係の仕事をすることが多いクロちゃんですが、もともとアイドルに目覚めたのはキンテツさんの影響だと伺っています。
小田原 えっ、そうなんですか!
クロちゃん 秋葉原のドン・キホーテがあるビルに『あっとほぉーむカフェ』というメイドカフェが入っているんですけど、キンテツと僕はそこに通っていまして。やがてビルの最上階にAKB48劇場が作られることになったんですね。そのとき、「アイドルの専門劇場らしいですよ。行ってみましょう」と誘ってくれたのがキンテツ。キンテツがいなかったら、僕はアイドルにハマっていなかったというのは間違いないでしょうね。そういう意味では、恩人です。
──では、ここで改めて「石川キンテツとは何者なのか?」を知らない人に向けて説明お願いします。
小田原 肩書でいうと、ライターです。手がけた大きな仕事としては『週刊少年サンデー』の読者投稿コーナー。たしか15年くらい続けたのかな。あれ、めちゃくちゃギャラがいいみたいなんですよ。週に1回、編集部に行くだけでウン万円ももらえたとか。そんな生活をずっと続けたことで、楽することを覚えてしまった。これが堕落の始まりです。
クロちゃん 俺が聞いた額は、もう少し高かったですけどね。続けているうちにギャラが上がったのかもしれない。あるいはキンテツが見栄を張って、高く自己申告していた可能性も否定できないけど(笑)。
小田原 だけど今って、漫画誌に限らず雑誌全体で読者投稿ページが少なくなっているじゃないですか。キンテツは『サンデー』で味わった甘い蜜が忘れられず、いろんなところで投稿ページの企画を出し続けていたんですよね。最初のうちはサブカル系ライターとして面白いものを見つけて取材してやろうという気概があったんだけど、だんだん手を抜いてお金を儲ける方向にばかり関心が向かうようになって……。
クロちゃん ホントわかりやすい男ですよ(笑)。
小田原 一時はキャバクラ雑誌とかでも原稿を書いていましたね。景気がいいときは、東京タワーが見える一等地のマンションに住んでいました。“おしゃれ”とか“高級”といったイメージが好きな奴なんですよ。キンテツ自身は角刈りで、おしゃれ要素ゼロなのに。
クロちゃん それで言うと、最近、(恋人の)リチを連れて東京タワーが見えるおしゃれなバーに行ったんです。リチはすごく喜んでくれたんですけど、「そういえば、このお店って前にキンテツと来たことがあるな」と思い出しまして(苦笑)。もちろんリチにキンテツの説明はしませんでしたけど。
──トレンドに敏感な方ではあったんですね。
クロちゃん あとキンテツって、さくまあきらさん(漫画評論家、ゲームライター、集英社『週刊少年ジャンプ』読者欄担当者)と少し関わりがあったんですよ。
小田原 “チームさくま”の一員という感じでしたね。
クロちゃん その関係で『桃太郎電鉄』シリーズのテストプレイもやっていたらしいんです。ビックリしたのはキャバクラで「俺が桃鉄を作ったんだよね」とか言い出したとき。よくよく話を聞いてみると、さくまさんの別荘でテストプレイをしてただけなんだけど、とんでもない話の盛り方をするなって(笑)。
──あとはプロレス関係で、永島勝司氏の書籍にも携わっていました(イースト・プレス刊『地獄のアングル:プロレスのどん底を味わった男の告白』)。
クロちゃん あれもひどい話で、のちに自分がゴーストライターをやっていたとカミングアウトしたんですよ。一番の禁じ手ですよ! ゴーストライターが「実は私がゴーストライターやっていたました」とか言い出すなんてデタラメすぎるでしょ! 『サンデー』の読者欄をやっていた頃は、週に1日だけ仕事をして、あとの6日は公園で本を読んでいましたから、いい加減な奴なんです(笑)。
▽くろちゃん
1976年、広島県生まれ。01年、団長安田、HIROとともにお笑いトリオ・安田大サーカスを結成。強面のルックスに女性のような甲高い声が特徴で、バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などで炎上騒動を起こすこともしばしば。アイドルやキャバクラにも造詣が深い。近著に『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30』(徳間書店)。
▽おだわら・どらごん
1970年、兵庫県生まれ。98年、『週刊ヤングマガジン』(講談社)の『おやすみなさい。』で初連載を果たすと、モテない男のペーソスを描いた作風で多くの支持を獲得。代表作『チェリーナイツ』(講談社)はドラマ化もされている。また『小田原ドラゴンくえすと!』(小学館)では、石川キンテツさんとタッグを組んで様々なスポットをレポート。近年は車内泊や愛犬をテーマにした作品をするなど、マルチに活躍している。
【後編はこちら】クロちゃん・小田原ドラゴン[友達を亡くすということ]「そりゃ後悔だってしますよ…(号泣)」
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