『極悪女王』を観て興味、作家・雨宮処凛が女子プロレスを初観戦「え、こんなに可愛いの?」
エンタメNEXT / 2024年11月25日 6時0分
『極悪女王』(Netflix)
格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ第9回。今回のテーマは、女子プロレスと推し。Netflixドラマ『極悪女王』を観て女子プロレスに興味を持った雨宮氏が、初めて現場に足を運んだ。団体によって色が違う女子プロレス、最初に観戦したのは、ライブパフォーマンスなどで選手のアイドル性も楽しめる東京女子プロレスだ(前後編の前編)。取材・文/雨宮処凛
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え、こんなに可愛いの? こんなにキラキラしてるの? このアイドルみたいな子たちが、本当にプロレスするの一一?
生まれて初めて女子プロに行った私の第一印象だ。
リングの上では、フリルやレースたっぷりで、パニエ(スカートを膨らませるためのアンダーウェア)で膨らんだスカートの女の子たちが歌い、踊り、笑顔を振りまいている。曲は『ベイビーフェイス』。満員の客席には、色とりどりのサイリウムを振る幸せそうな男性ファンたち。
その光景は、アイドルの現場そのものだった。
「女子プロ」が観たい一一。
そう思ったのは、今年の話題を『地面師』とともにかっさらったNetflix作品『極悪女王』を観たことが大きい。
ご存知の通り、80年代に一世を風靡した女子プロを描いた作品だ。主演はゆりやんレトリィバァで、女子プロのヒール・ダンプ松本を熱演。当時大人気だった「クラッシュギャルズ」との攻防が描かれ大きな話題となった。
思えば私が小学生だった80年代、アイドル雑誌には「クラッシュギャルズ」の長与千種とライオネル飛鳥が当たり前に掲載されていて、同級生女子の間では「千種派」「飛鳥派」といった派閥があったほど。下敷きや筆箱などにも彼女たちの顔がプリントされている人気ぶりで、また、テレビをつければダンプ松本がチェーン片手にブル中野らとともに暴れているというのが日常だった。それほどに、女子プロは「お茶の間」に浸透していた。
そんな、いかがわしくも絶大な人気を誇った当時の女子プロの世界がドラマ化されたのだ。面白くないはずがない。
詳しい内容は伏せるが、プロレスに青春を捧げし女子たちと、それが巨額の金を稼ぎ出したあの時代の物語は多くのプロレスファンも熱狂させ、また当時を体験している中年たちの心も鷲掴みにした。
そんなことから生まれて初めて高まった「女子プロ熱」。これを機に、令和の女子プロを体験してみようと思ったのだ。
訪れたのは11月10日、両国KFCホールで開催された「東京女子プロレス」の「世界を見渡すけど日本ってやっぱりすごくない!?」と題された試合。
女子プロにどんな団体があるか、どこがどういう系統なのかさっぱりわからないものの、チケットを取ってくれた編集・Aさんによると、「東京女子プロレス」はアイドル性の高い団体とのこと。また、この日は多くの選手が試合のため渡米しているということで、「日本の女子プロレス」がワールドワイドな活躍をしていることなどまったく知らなかった私は驚かされた。
ということで予習のため、試合情報が書かれたサイトを見ると、この日は「らく」をキャプテンとする「らくはん号」と、「原宿ぽむ」をキャプテンとする「ぽむちゃん軍団」に分かれてのチーム対抗戦とのこと。
「らく」も「ぽむ」もどんな選手だか想像もつかないが、対抗戦ということは頭にインプット。
そんな説明のすぐに下には、「協賛」についての記述が。
「今大会は山田水産株式会社の協賛となります。山田水産の主力商品である鰻の蒲焼き『山田のうなぎ』は24時間365日、鰻と向き合う『鰻師』たちが『無農養鰻』にこだわり抜き、鹿児島の清らかな地下水で鰻を丹精込めて育て上げ、最後は『焼師』たちが4度の丁寧な焼き上げで、専門店の職人技を再現しています。勝利者チームには、山田水産株式会社より勝利者賞として愛情品質の『山田のうなぎ』(鰻の蒲焼)10kgが贈呈されます」
長々と引用したが、これが「当日券情報」より上に掲載されているのだ。なんか、協賛の存在感が大きすぎないか?
少なくとも私の界隈(ヴィジュアル系)では食品、しかもうなぎを贈呈なんて、世界観的にもありえないことである。「ベルサイユのばら」な世界と「◯◯水産」は決して交わってはいけないのだ。
驚きつつも、「今日の試合は鰻を賭けて行われる」という事実がここまであからさまになっていることに、ある種の清々しささえ覚えたのだった。
そうして開演時間の午後12時半を少し過ぎた頃、司会の女性が登場し、試合の始まりだ。
と思ったらまさかのショータイム。
アイドル風の衣装を着た女の子3人がリングに登場。(※渡辺未詩は米シアトル大会出場のため欠場)
「アップアップガールズ(プロレス)」と名乗った彼女たちは「曲はベイビーフェイスです」と言うと、くるくると歌い踊り始めたのだった。
客席から上がる、メンバーを呼ぶ声。
私は混乱を抑え切れないでいた。
なぜ、これからプロレスを始めようというのにアイドルが歌って踊る? 関係なくない?
そう思ったものの、同行したAさんによると、「東京女子プロレス」では当たり前の光景らしい。しかも、リングで踊る、アイドルにしか見えない3人はみんなレスラーだというからブッたまげた。本当に、アイドルグループにいても何の違和感もないほどキラキラしている。それなのにプロレスまでするなんて。そんな細くて小さな身体で、本当に?
さて、曲が終わり、とうとう試合の始まりだ。
誰がどういう名前でどっちのチームとか全然わからないけど、アイドル顔負けの選手たちは、リングの上でガチで戦う。その様子に、まずは度肝を抜かれた。
さっきはヒラヒラ舞い踊ってたのに、この人たち、本当にむちゃくちゃ練習してレスラーとしてこの場に挑んでいる。当たり前だが、どの選手もヴィジュアルが私の思う「レスラー像」からかけ離れているため、脳の処理が追いつかないのだ。
そうして気づけば、手に汗握り、前のめりになっていた。
【後編はこちら】作家・雨宮処凛が女子プロレスを初観戦、“バンギャ”的にも刺激「拝みたいような気持ちになった」
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