作家・雨宮処凛が女子プロレスを初観戦、“バンギャ”的にも刺激「拝みたいような気持ちになった」
エンタメNEXT / 2024年11月25日 6時1分
(C)東京女子プロレス
格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ第9回。今回のテーマは、女子プロレスと推し。Netflixドラマ『極悪女王』を観て女子プロレスに興味を持った雨宮氏が、初めて現場に足を運んだ。団体によって色が違う女子プロレス、最初に観戦したのは、ライブパフォーマンスなどで選手のアイドル性も楽しめる東京女子プロレスだ(前後編の後編)。取材・文/雨宮処凛
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昨年、初めて男性のプロレスを生で見たものの(※プロレスリング・ノアを観戦)、女子プロの世界は全然違った。
まず、選手たちが発光しているかのように輝いている。身体能力がすさまじく、ばねのように躍動する身体が美しい。本当に、ずっと眺めていたいほどに。
衣装もいい。基本、上半身裸の男性と違い、セクシー系、スポーティ、アイドル系、女王様風などバリエーションが豊かで見ているだけで楽しい。
「新しい絶対領域!」と感銘を受けたのは、ショートパンツの側面を編み上げっぽくした衣装。側面というか、臀部の右半分から側面にかけてが編み上げになっているデザインで、それが強くてセクシーなレスラー像を体現しているようでむちゃくちゃ彼女に似合っていたのだった。
対して、アイドル衣装そのままの格好でリングに上がる選手もいる。しかし、そこはプレロス。当然倒されたり、寝技をかけられたりでスカートの中があらわになる。ふわふわのスカートの下にはもちろんドロワーズ(ロリータファッションなどの際に履くゆったりした下着。フリルなど装飾性が高い)を履いているわけだが、私は20代の頃、ロリータファッションをしていた身。真っ白なパニエやドロワーズをまさかプロレスのリングの上で見ることになるとは…と思わず感慨深くなったのだった。
さて、そんな女子プロ初観戦で胸を打たれたのは、選手たちの「必死さ」だ。
キラキラした選手たちが、「ウワーッ!」「ギャーッ!!」と断末魔のような声で叫び、激しいもみ合いの末にツインテールがぐちゃぐちゃになったり、必死の形相でロープに手を伸ばす。
そんな姿を見るうちに、なんだかじわじわと心を掴まれていた。絶叫し、髪を振り乱す少女のエモさという点では『新世紀エヴァンゲリオン』を初めて観た時の感覚に似ているかもしれない。そこに加わる、何か見てはいけないものを見ているような背徳感。なんか女子プロって、一番遠い世界だと思ってたけど、私の好きな成分がけっこう濃厚に詰まってるのかもしれない…。
それを確信したのは、椎名林檎の「歌舞伎町の女王」とともに登場した一人の選手を見た瞬間だった。
顔を白く塗り、黒いボンテージ的な衣装に身を包んだ網タイツの彼女は、私が現役だった「いにしえの90年代バンギャ」を体現しているかのようだった。
そう、うっすらと、試合が始まった瞬間から感じていたのだが、女子プロレスの世界には、バンギャ的な要素がところどころちりばめられているのだ。
この選手以外にも、「猫はるか」という選手の衣装も「平成バンギャ」っぽいものだったし、90年代、原宿の竹下通りで売ってそうな系統の衣装が少なくないのだ。そんなことから一気に湧き出す親近感。女子プロの中には、意外と元バンギャとか現役バンギャとか、少なくないのではないだろうか?
そんな試合終盤、リングには背が高く、長い髪がサラサラで「綺麗なお姉さん」が具現化したような選手が登場。肩にはベルトをかけているから綺麗な上に強いとは。そう思って見ていると、リングアナウンサーは彼女が「SKE48」のメンバーだと紹介する。
は? SKE48? なんでそんな有名なグループのアイドルがここにいるの? ってか、元SKEってことだよね? セカンドキャリアで女子プロってこと?
混乱しながらAさんに聞くと、なんと現役でSKE48に所属し、プロレスもやっているとのことでぶったまげた。こんなピンポイントな二刀流ってあるだろうか? てか、アイドルと女子プロって一番遠いと思ってたけどいつの間にこんなことになってたの? 知らないの私だけ? あと、なんで客席のみんな「SKE」とか聞いても当たり前みたいな顔してんの? もっとびっくりしようよ! これは、これはすごいことなんだよ!
思わずその辺の男性ファンの肩を揺さぶりたくなったものの、対抗試合はSKEメンバーが技を決めて勝利。最後まで完璧な表情管理で戦い抜いた姿と、試合後もまったく乱れていないストレートの髪に、なんだか拝みたいような気持ちになったのだった。
ということで試合は終わったのだが、この日、私には心を掴まれた人がいる。
それは「原宿ぽむ」。この日、「らく」率いる「らくはん号」に対する「ぽむちゃん軍団」のキャプテンである。
「原宿」という名の通り、カラフルな衣装に身を包み、シルバーに染めた髪をツインテールにしたぽむ選手。登場の瞬間、飛ぶようにリングの周りを駆け抜ける姿や、「アニキ」と呼ばれるガタイのいい選手との対決を「怖い!」と逃げ惑う様、試合に負けて泣きじゃくる姿などはなんだかアニメから飛び出してきた女の子みたいで、妖精のような存在感にすっかり心奪われてしまったのだ。
そんな原宿ぽむのプロレスカード(この日配られていた)には、「原宿生まれ原宿育ちのKAWAII系レスラーを名乗る。個性的なコスチュームという点では、現役女子プロレスラーの中でも上位に入ること間違いナシ」とのことで、得意技は「ぽむ・ど・じゃすてぃす、ラフォーレ原宿」とのこと。なんなんだ、得意技が「ラフォーレ原宿」って。そんなの、見てみたすぎるじゃないか。
ということで、試合が終わる頃には、日曜午後にわざわざ女子プロを見に集まる人たちの気持ちがわかり始めていた。ここでしか得られない何かが、確実にある。アイドルでもない、女子プロレスだけでもない、ここにしかない、何か。
そうしてみんな揃ってのエンディングは、「らくはん号」チームの「うなぎ取ったぞー!」という、現世利益的な叫びで締められたのだった。
最初から最後まで一貫して、正真正銘、清々しいほどにうなぎをかけた戦いだった。
ちなみにファンの男女比でいうと、ざっとみた限り男8女2くらい。女性も結構多く、レディースシートもあるので初心者女性でも安心だろう。
スカッとしたい時なんかに、ぜひ一度、足を運ぶことをお勧めしたい。
【前編はこちら】『極悪女王』を観て興味、作家・雨宮処凛が女子プロレスを初観戦「え、こんなに可愛いの?」
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