有村昆が2024年洋画ベスト10を発表、『ナポレオン』を観てリーダー不在の日本社会を考えた
エンタメNEXT / 2024年12月29日 11時30分
『ナポレオン』
映画コメンテーターの有村昆が、2024年に公開された「洋画」の中から個人的に面白かったベスト10を発表。前編では10位〜6位までの作品についてコメントします。一体、どんな作品がランクインしているのか!?(前後編の前編)
【画像】有村昆が選ぶ2024年洋画ベスト、10位~6位
2024年はオリンピックなどのスポーツイベントや、様々なエンタテイメントが盛り上がったこともあったせいか映画の注目度が下がり、全体的に低調な興行収入となったようです。でも、作品的にはバラエティに富んでいて、個性的で面白い作品も多かったと思います。そこで僭越ながら映画コメンテーターの有村昆が、2024年に心に残った映画ベスト10を発表させていただきたいと思います。まずは洋画編から。
アリコンが選ぶ 2024年洋画ベスト10(10位〜6位)
10位『エアロック 海底緊急避難所』
9位『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
8位『オッペンハイマー』
7位『ナポレオン』
6位『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』
第10位は『エア・ロック 海底緊急避難所』です。
いきなりB級作品なんですけど、やっぱりこういうジャンル映画は個人的に外せないですね。しかも、僕の大好きな「航空機パニック」と「サメ映画」と「限定空間モノ」が合わさった欲張り仕様なので、これは注目せざるを得ませんでした。
まず、旅客機が事故で墜落して、海底に沈んでしまうんです。その機内には「エアロック」という、外部との気圧を調節するための隔壁で覆われた密室があって、そこに7人だけが生き残る。しかし、海の底なので水圧が押しかかってくるし、狭いので酸欠になるし、外に出れたとしてもサメがウヨウヨ泳いでいる…という絶体絶命の状況をどうくぐり抜けていくかというお話です。
水中で檻から出られなくなってしまう『海底47m』とか、地上600メートルの鉄塔に女子2人が取り残される『FALL/フォール』とか、限定空間サバイバル映画も、あの手この手を駆使してますが、今作は高度2万フィートから深海に沈むという、高低差としては史上最大級のパニックを描いています。
低予算作品なので派手さはないんですけど、それをあふれるアイディアで面白くしようという制作陣の意気込みを評価して10位にしました。サブスクの配信ストレートになってしまいそうな作品ですけど、ちゃんと劇場公開してくれたのも嬉しかったですね。
第9位は迷ったんですが、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』をここに入れさせてもらいました。
期待度と話題性でいえば、本年ベスト級の作品であることは間違いないんですけど、個人的ランキングの上位に喰い込まなかった理由としては、やっぱり僕が想い描いていたジョーカー像にはなっていなかったということですよね。稀代のヴィランであるジョーカーというより、悲しい人間アーサーの物語になっていた。もちろんそれはトッド・フィリップス監督の狙いなんですけど、それは観客が欲しい料理じゃなかったと思うんですよね。ラーメンを食べに行ったのに、うどんが出てきたみたいな。
前作が衝撃的な展開だったので、今回はどんなめちゃくちゃなことをやってくれるんだろうと思ったら、地味な裁判劇が続きます。そこにミュージカルが入ってくるんですけど、それが『シカゴ』のパクリみたいな感じなんですよ。レディー・ガガの歌は素晴らしいんですが、映画としてはあまり機能していなかった。これをやりたいんだろうなってのはわかるんだけど、前作は超えられなかったというところですよね。
だったら、現代社会における犯罪とは? というテーマをもっと掘り下げてもらいたかったです。そんなつもりはなかったけど、不幸の連鎖で事件を起こしてしまった男に対して、どこまで罪を背負わせるべきか。そこをポイントにすれば、最近の闇バイト犯罪にも通じるような社会的問題が炙り出せたような気がするんですよね。
そこで第8位も、センシティヴな問題に切り込んでいるのかどうかが問われた『オッペンハイマー』を入れたいと思います。
日本公開の際に、原爆の被害に対してどういうスタンスを取っているのかということが問題視されましたけど、なんとなくの知識しかない普通の映画ファンが観ても、オッペンハイマー博士がとんでもないものを作ってしまって、その恐怖に苛まれていたということが伝わるような作品になっていたと思います。アメリカ映画ですけど、アメリカ万歳にしなかったところも良かったですし、核の恐怖もしっかり伝わってきました。
映像に関しては、さすがクリストファー・ノーラン監督でしたね。僕はIMAXのスクリーンで観たんですけど、爆破実験のシーンは本当に大迫力。観てるだけで吹き飛ばされそうというか、熱も感じるくらいの没入感で、あの実験を最前線で観ているような緊張感がありました。
第7位は、歴史スペクタクル大作『ナポレオン』です。ナポレオンという名前は知ってるけど具体的に何をした人かわからないという人がほとんどだと思うんですけど、映画を観ると、戦場の英雄としての輝きながらも、ロシアに負けて国を追放され、不遇の晩年を迎えていくという生涯がしっかり理解できる。歴史を描いた映像叙事詩として、すごく良く出来ていたと思います。
僕は観終わったあと、こんなナポレオンのような強きリーダーがいまの日本に足りないな、と考えてしまいました。それは、まわりで足を引っ張る人ばかりという日本社会にも問題がある。実力があって頑張っている人が出てきても、不倫スキャンダルとかですぐ引っ込められててしまうじゃないですか。もちろん、不倫は良くないです。絶対に不倫はダメです。でも、それでその人のやってきたこととか、やろうとしていることがすべて否定されて、活動が止まってしまうのは、全体としてはマイナスだし、結果的に何も進まなくなっちゃう気がするんですよね。
アメリカではトランプさんが大統領選に勝ちましたけど、彼もいろんなスキャンダルや問題を抱えているじゃないですか。それでもあれだけの支持を集めて、トップとして仕事を進めていく、というのも事実なわけです。
『ナポレオン』は、そんな強いリーダー像について歴史から学ぶという意味でも、今年観ておいたほうがいい作品だと思いました。
シリアスな作品ばかりなので、このあたりでちょっとオツな作品も入れたくて第6位は『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』にしてみました。これはアポロ計画で人類が初めて月に行こうとしていた時代を舞台にしていて、主演はスカーレット・ヨハンソンとチャニング・テイタム。
アポロ計画の史実的な部分が知りたければデミアン・チャゼル監督の『ファーストマン』という映画を観ていただければと思いますが、『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』は、その裏でどんなドタバタがあったかをオシャレに仕上げたロマンティック・コメディなんです。
アポロが月面に到達して、人類が初めて月に降り立つ。その映像を衛星中継で全世界に放映するんですけど、途中で中継電波が届かなかったりしたら、NASAはおろか、アメリカの面目が丸潰れになってしまう。そこでプランBとして、スタジオで月面を再現した映像を撮っておこうということになるんですね。
昔から、アポロが月面に降り立った映像はスタンリー・キューブリック監督が撮ったという都市伝説があるんです。それを火星探査船に置き換えて、サスペンスSFとして描いた『カプリコン・1』という映画もありますね。
でも本作は、そんな都市伝説を踏まえたうえで、おしゃれでポップな演出でサラリと描いているのがいい。重い作品が多かったなかで、 そのライトな感じが非常に気持ちのいい映画体験だったので、1票を入れさせていただいたという感じです。
【1~5位はこちら】有村昆が2024年の個人的洋画1位を発表「今年はシリアスな作品に良作が多かった」
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