マシンガンズが語る、売れない芸人半生「滝沢が就職して終わっていくんだなと、諦めがありましたね」
エンタメNEXT / 2024年12月26日 6時0分
マシンガンズ 撮影/西邑泰和
25年以上の芸人人生で酸いも甘いも噛み分けてきたマシンガンズの2人。2023年に開催された第1回『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』の準優勝を経て、再ブレイクの兆しを見せている。そんな2人にこれまでの芸人人生を改めて振り返ってもらいつつ、書籍『もう諦めた でも辞めない』(日経BP)の出版の経緯を聞いた。(前後編の前編)
【写真】書籍『もう諦めた でも辞めない』を発売したマシンガンズ
──最初の芸人としてのブレイクは2007年放送の『爆笑ピンクカーペット』(※『爆笑レッドカーペット』の深夜版)でしたね。当時の心境はいかがでしたか?
西堀 気分の高揚はすごかったですね。初めてネタでちゃんとテレビに出られて、やっという感じでした。
滝沢 『ピンクカーペット』は1分という短い時間だったんですけど、1分でもネタをやれたというのは、芸人になってからの目標なので嬉しかったですね。
西堀 初めて“自称芸人”から抜け出たんじゃないですかね。
──芸人としての手応えもあったんでしょうか?
滝沢 もう芸人を辞めようと思っていて、ダブルツッコミに挑戦してみたらウケたんですよね。そこから『太田プロライブ』でも7~8か月くらい連続で1位になって、これはいけるなとなって、希望に満ちていましたね。
西堀 僕らにとって初めて人前でウケるという手応えをつかんだ時期。自信つきましたよね。
──ただ、そこから大ブレイクというわけにはいかず、一度お笑いブームが下火になりました。
西堀 これは後に気付くんですけど、当時は焦っていました。
滝沢 次の段階に進めないぞと。同時期にネタで出てきた周りの芸人は『踊る!さんま御殿!!』とかに出ているけど、自分たちは呼ばれていなくて。なんで呼ばれないんだろうと理由も答えもわからないし、その時点では焦っていました。
──当時、その状況を打破するような動きはしていたんでしょうか?
西堀 それがしていないんですよね(笑)。努力も研究もしていないし、気は焦っているけど、どうしたらいいかわかっていない。打開策とかこうしようとかは話していなかったよな?
滝沢 先輩には相談したかもね。ダチョウ倶楽部さんとか劇団ひとりさんとか。ただ、答えはなかったりするし、実践したとしても結果につながるわけでもないので難しいですよね。
──それから滝沢さんはごみ収集会社に就職し、西堀さんは俳優のお仕事も増えてきます。芸人としてどうなっていくのかという不安はなかったんですか?
西堀 滝沢が就職して終わっていくんだなと、諦めがありましたね。滝沢が「心の中では芸人を辞めている」とライブで言ったんですよ。まっすぐ売れるのはもう無理なのかなって気持ちもありました。生活もありましたしね。
滝沢 僕らで言うと、2年前までそうですよ。人生設計に入っていなかった『THE SECOND』があって、ラッキーでした。特に努力しているわけではないし、ネタも20年前くらいので出ているので、辞めなかった一点だけ褒めてやりたいです。
──なぜ芸人を辞めるという一歩を踏み出さなかったのでしょうか?
滝沢 全部が全部だめだったらもっと早く辞めているんですよ。この業界はたまにチャンスくれたりするんですよね。秋元康さんが気まぐれに番組出してくれたり、『THE MANZAI』があったり。ポイントではチャンスがあって、それで結果が出なかったんです。あとは、辞めるほうが怖いですね。芸人を続けるためにゴミ清掃員になったし、とりあえず続けてあがいてみるみたいな感じですよね。昔、親父が歌手を目指していたらしくて「お前が生まれるからやめたんだ」と言われたのが悲しくて、僕は子供にそう言いたくなかった。だから、お笑いがすごい好きというわけではないです。
西堀 ちょっとくらい好きでいろよ(笑)。
滝沢 今もそんなに好きじゃないですね。
──そうなんですね(笑)。周りには芸人を辞めていく先輩・後輩もいましたよね?
滝沢 そうですね。止まっちゃうと終わるというか…。辞めていった芸人を見ると、「借金なくすためにバイトに専念するわ」とか言ってそのまま辞めていくんですよね。我に返るとやっていられないんですよ。
西堀 そうそう、渦中にいないと辞めちゃう。
滝沢 感覚が麻痺していないと芸人なんてできないですよ。
──そんな長いトンネルのような時代が続き、2023年の『THE SECOND』でまた日の目を見るようになりました。当初はこの大会をどう見ていたんでしょうか?
西堀 まためんどくさいのが始まったなと。さすがに漫才をやっていて出ないのはどうなんだと思ったんですけど、一回目のとき副鼻腔炎の手術と予選が重なっていて、断るいい口実ができたと思っていたら、たまたまずれてマネージャーが勝手に応募して出ることになってすごく後ろ向きでしたね。
滝沢 出るしかないので。考える余地はないですよ。僕らは事務所の犬みたいなもので、やれって言われたこと全部やっているんです。
──しかし、大会が始まるとあれよあれよと勝ち上がり、見事準優勝を飾りました。こんな事態を予想していましたか?
2人 ないないない。
滝沢 とりあえず参加してだめでしたよってなると思っていました。だから、こういうこともあるんだなと。
西堀 この大会は人間の欲深さが出ますね。最初はノックアウトステージ32に残って、本来なら2人で「よくやったな」となるんですけど、次16に残ったら「あれっ、もっと勝ちたいな」と思うようになっていて。そういうのがここ15年なかったので、環境が変わらないと人は変わらないのかなと思いますね。
──それから、一気に再ブレイクの兆しが表れました。これも想像はしていなかったでしょうか?
西堀 仕事は増えるのかなくらい思っていたけど、当日はあんまり思っていなかったです。打ち上げに行って家帰ったら夜中の2、3時で嫁も寝ていましたし、やったぞという実感はなかったですよね。
滝沢 目の前のことを一生懸命やっただけなんですけど、LINEが270件くらいきていたので、すごいことやったのかなと。終わってすぐに超新塾のイーグルさんが「売れたな」と言ってくれたので、仕事増えるかなと期待はしていました。
──テレビ出演や、今回の書籍出版などメディア露出もまた増えてきているかと思います。今後の芸人としての目標はありますか?
西堀 芸人でいること。稼いでいる芸人でいたい。ただ、稼げなくなっても続けているんじゃないですかね。芸人って定義がないので、年に1回滝沢と漫才したって芸人ですもんね。と思っているけど、滝沢にそんな気はないんですよね(笑)。
滝沢 ない。ネタはなるべくやりたくないけど、後輩には尊敬されたいし、お金はたっぷりほしいです(笑)。
──書籍もヒットしてお金につながるといいですよね(笑)。最初、本が出るという話をもらった時の率直な感想はどうだったんですか?
西堀 何を本にするんだろうと思いました(笑)。
──そんな状態から始まったんですね。
滝沢 一般の方にとっても意義のある本にしようってなったんですけど、僕らだから取材されていても教訓めいたものが何も出てこなくて…(笑)。
──そうなんですか?(笑)
西堀 編集さんも困ったと思います。でも途中から向こうサイドも「こいつらこういうやつなんだな」という気づきがあったというか。我々のいいところを引き出すと言うよりは、後半はこういうやつらもいるんだぞっていうテイストになっていった気がします。
──では最後に、『もう諦めた でも辞めない』はどのような人に届くと嬉しいか教えてください。
西堀 頑張らなきゃという強迫観念にとらわれている人に読んでほしいですね。頑張るのは偉いんですけど、頑張らないのが悪いわけじゃないじゃないですか。大変な思いをしている人にこそ読んでみてほしいですね。
滝沢 なんか諦めた人に読んでほしいです。下にも仲間がいるんだなって。ある種見下してもらうのが芸人の本望なんでね。
▽『もう諦めた でも辞めない』
著者:マシンガンズ
定価:1760 円(税込)
発行:株式会社日経 BP
【後編はこちら】どん底から再ブレイクへ、マシンガンズが語る苦境対策「絶対に努力より環境、前向きな逃避」
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