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「今が一番楽しい、でも今が一番つらい」井上咲楽、25歳のいま胸にある素直な気持ち

エンタメNEXT / 2024年12月30日 6時0分

「今が一番楽しい、でも今が一番つらい」井上咲楽、25歳のいま胸にある素直な気持ち

井上咲楽 撮影/荻原大志

『新婚さんいらっしゃい!』を始め、数多くの情報番組やバラエティ番組で活躍する井上咲楽。「笑顔で明るくいつも元気」なイメージの彼女が、人知れず抱えてきた「ブレイクまでの苦悩」や「自己肯定感の低さ」、「不安」や「生きづらさ」について綴ったエッセイ『じんせい手帖』(徳間書店)が11月に発売された。今回は、その本の中から、25歳を迎えた彼女が抱えている“自分を素直に認めてあげられない”という悩み、を特別編集版でお届けする。(全5回の5回目)

【写真】中学バレー部でいじられキャラに、写真で振り返る井上咲の半生
 
   *   *   *

<この行ったり来たりする感情は何か?>
25歳になった今、すごく不思議な感じがしている。

眉毛を剃った後に美容誌やファッション誌に出られるようになって、100キロマラソンを走って、無人島ロケもやって、選挙特番にも呼んでもらえるようになって、大河ドラマにまで出演することになった。

全部を含めて俯瞰して見たら、本当に面白い3年間だった。

テレビに出る仕事が続いているのもありがたいし、料理本も出せて、YouTubeも始めて、全部を自分が楽しめている感覚がある。周りから「井上咲楽はあんなこともするんだ」「意外」と言ってもらえるのがうれしいし、心地いい。

これからも自分から仕掛けて、違った面をどんどん出していきたいと思っている。

でも、あいかわらず内面ではぐるぐると考え込んでいる。

今が一番楽しい。そう感じているのに、ふとした時に不安になるし、苦しくなっている自分がいる。もちろん、「どこに仕事があるんだろう?」と悩んでいた当時には戻りたくない。それなのに、なんなら今が一番つらいと感じる日さえあるのだ。客観的に見たら、すごくバランスのいい状態になっているのに、何が不安で、何が苦しいの? と不思議に思われるかもしれない。

この行ったり来たりする感情をうまく説明できるかわからないけど、もう少しだけ、書いてみる。

例えば、マラソンは練習を重ねるとちょっとずつタイムがよくなっていって、目標をクリアすると、少し自信が増す。だけど一度完走できたらもう安心かというと、そうじゃない。

最初に27時間テレビで100キロマラソンを走ることになった時、「100キロってすごいなあ……。でも、もしこのすごいと思っている100キロを走りきれたら、自分のことをちょっとくらいはいいと思えるんじゃないか? 心をとってしまいたいと思うくらいうんざりする自分から、解放されるんじゃないか?」と思って、ゴールするのを楽しみにしていた。

でも、いざゴールしてみると、大きな達成感はあったけど、自分の中に大きな変化は起きなかった。あそこまで行っても何も変わらなかったことが残念なような、こんなことぐらいでは変化しない自分にホッと安心したような。そんな気分だった。

今、私のフルマラソンのベストタイムは3時間26分。ある程度、「すごい」と驚いてもらえるタイムで、記録が出た直後は満足感があった。

だけど、もう1人の自分がこんなツッコミを入れてくる。

「走っているのって、結局、手と足を早く動かしているだけじゃない? これってバレーボール部だったのに球技がうまくならなかった私が、他にできることがなかったから続けているだけじゃないの? マラソンを速く走れるからって、仕事の役に立つ?」

私の中ではいつもこうだ。

素直に喜べばいいのに、喜びさえも受け入れられずに自分に難癖をつける。できることとできないことがあって当たり前なのに、できないことばかりに焦点がいってしまう。

ずっと心が忙しくて落ち着かない。



<自己評価は高いけど、自己肯定感が低い私>
たぶん、私は自己評価が高いのだと思う。だけど、自己肯定感は低い。

自己評価が高いから、うまくいくことがあっても喜ぶことができない。その反面、期待値が高いからこそ、失敗した時の落ち込みも激しい。

でも、自己肯定感は低いので、良かれと思って褒めてもらっても、「本当に全然そんなことありません」と謙遜とかではなく、真顔で否定してヘンな空気になってしまったりもする。なんだかもう、めちゃくちゃだ。

「もっともっといろんなことができるはず!」と自分に期待している私。

「理想が高すぎるんじゃないですか?」と自分のシャツの襟首をつかんで後ろに引っ張る私。

どちらの私も存在しているから、100%満足して楽しい状態がやってこない。うまくいっていても、常に何か足りないと焦っている。

でも、最近ある発見があった。

キャシー中島さんの息子で、手芸作家の洋輔さんと対談した時のことだ。洋輔さんは「例えば洋服だったらデザイナー、パタンナー、縫製、販売……など、細かい工程に別れているように、手芸は細かい工程の中で得意不得意を活かせるように、昔から分業制になっているんです」と話してくださった。

それを聞いて、「ああ、私に足りないのはこれだ」と思った。人にもそれぞれ違った役割がある。そのおかげで社会ってうまく成り立っている。だから人と比べるなんて、本当はどうでもいいことなのかもしれない。

私は、まず自己評価を正確にできるようになりたい。

これはできる、これはできない、を正確に把握して、それに対して悲観的になるのではなく、「じゃあどうする?」とまっすぐに考えたい。できないから、じゃあできるようにやり方を考えてみよう、もよし。できないことはできる人に任せて、できることで頑張ってみよう! と切り替えるもよし。

今のままでは楽しめるはずのことも楽しめない。悲観的になっていることより、やるべきことがあることくらい自分が一番よくわかっている。

どうにかして、この雑巾を絞ったようなメンタルから抜け出したいと思う。

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