「競争優位の戦略論は、もう時代遅れである」/企業戦略の根底を支える新たな方法論とは? 

EnterpriseZine / 2014年2月7日 8時0分

図2:リタ・マグラスによるイノベーションの社内的位置づけの推移

 本書は、新規事業開発研究の第一人者でコロンビア・ビジネススクール教授のリタ・マグラスが昨年6月に出版した著作です。マグラス教授は、この3年程度で最も多くハーバード・ビジネス・レビュー誌に取り上げられている、アメリカのビジネス界注目の研究者の一人です。私(小川)は、1998年に初めてマグラス教授に会って以降、度々意見交換の機会をいただいてきました。マグラス教授の研究テーマの推移についても紹介してみたいと思います。

■イノベーションに終わりはない

 「マイケル・ポーターに代表される競争優位の戦略論は、もう時代遅れである」と提言する野心的な書籍を紹介します。

 “The End of Competitive Advantage – How to Keep Your Strategy Moving as Fast as Your Business”/(Rita Gunther McGrath/Harvard Business School Press)です。

 筆者の主張は、競争優位がある時点で達成できたとしても、その瞬間から優位性は崩れ始めており、今の時代には、競争優位を確保し続けることは幻想にすぎない、というものです。

 冒頭に、ソニーが初めてデジタルカメラを発売した1984年頃から、富士フィルムが業態転換に成功するため、全社的な努力を継続してきた例が紹介されています。一方、同じカメラ向け銀塩フィルム業界でかつて世界一の競争優位を誇ったコダックは2011年に破綻しました。

 筆者は、確保した競争優位にしがみついてしまうことが、安定を志向させ組織を硬直化させ、イノベーションを妨げると主張します。競争優位が安定的と思いこむと、イノベーションへの取り組みが遅れ、おまけの仕事になってしまいます。

 筆者が最も伝えたいのは、常にイノベーションを企業戦略の中心に据え、短期的な成果を期待するのではなく辛抱強く企業戦略の中心としてイノベーションに取り組むべきだ、というメッセージです。

 イノベーションは、企業変革の武器とか、ピンチになってから取り組む、というような本業以外の、あるいは、一時的な取り組みの位置づけであってはならない。なぜならば、常に新たな競争優位の獲得に取り組む必要性が高まっているのが現在であり、そのためにイノベーションを最重要の取り組みと位置付けるべきだ、と強く語りかけてきます。

 では、次頁以降で、本書の主張を詳しくみていきましょう。

小川 康[著]

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