三社長三様、彼らは今後のIT業界をどうやって牽引していくのか

EnterpriseZine / 2014年4月16日 15時0分

 先週は、エンタープライズITトップベンダー3社の社長の話を聞く機会に恵まれた。最初が、SAPジャパンの安斎富太郎社長。SAP HANAクラウドデータセンターが日本で開設したことを発表した。クラウドデータセンターの取り組みは、ジャパンだけでなくSAPトータルで力を入れているビジネスだ。日本が世界で4カ国目であり、アジアパシフィックでは初のデータセンターとなる。

■SAP HANAクラウドデータセンターが日本で開設、新しい取り組みに込めた思い伝わったか

 「大規模な基幹系システムをインメモリー上で動かし、それをクラウドで提供できるのはSAPだけ。エブリシング・クラウド、エブリシング・インメモリーを実現、具現化します。顧客がアイデアを浮かべ、すぐにそれをスタートできます。短期に低コストでシンプルに、ITの持っていたすべての制約を取り払うことができる。それが顧客にとって意義のあることです」(安斎氏)

 データセンターは東京、大阪という2拠点に設置され、国内だけで災害対策構成も可能。日本のクラウドデータセンターが開設されたことで、基幹系システムのように海外のデータセンターにデータを置きたくない場合にも、障壁がなくなった。今後SAP HANAをベースにしたビジネスは、クラウドでの展開が加速するだろう。

 そうなると問題となるのがパートナーとの関係。SAPのERPビジネスの成功は、直販営業の成果ももちろんあるがパートナーが製品を担ぎ拡販したことによる恩恵も大きいだろう。これがクラウドになると、どうしても直販モデル重視となりパートナーが介入する余地があまりなくなる。日本で外資ソフトウェアベンダーが成功する1つの要因が、パートナーとの良好な関係。パートナーが積極的に提案してくれれば、製品の普及は加速する。

 なぜパートナーはSAP製品を提案するのか。パートナーが利益を上げやすいビジネスモデルがそこにあるから。販売代理手数料であったり、導入SIであったり。ところがクラウドにはそれがほとんどない。安斎氏は、オンプレミスからクラウドに行く部分をパートナーに担ってもらうと説明する。それにより今後もパートナーとは共存共栄で行くのだと強調、データセンターが日本で開設したことはパートナーにも意義があるとも言う。

 たしかに、顧客が望むものを素早く提供できる面では意義はあるが、売り上げや利益が小さくなるわけで、パートナーからはそう簡単に有意義とは受け止めてはもらえないかもしれない。今回の安斎氏に限った話ではないが、自社クラウドビジネスの拡大とパートナーの話題になるとベンダートップの歯切れは悪くなる。

 もう1つ安斎氏の歯切れを悪くしたのが、可用性に関するSLAの数字。今回のSAP HANAクラウドデータセンターで保証される可用性は99.7%。この数値は世界共通となっている。多くの企業は、オンプレミスでシステムを自社運用していれば99.7%の可用性でも問題ないかもしれない。とはいえ、クラウドのサービスとなると、日本の保守的な企業は99.7%というSLAでは納得しないだろう。

 ファイブ9とは言わずとも、99.9%以上の数字が求められそうだ。ちなみに、Amazon EC2やMicrosoft Azureは99.95%というSLAを示している。SAPもこれには合わせたかったところか。記者発表の際にも日本独自サービスでこの数値を引き上げられないかとの質問も出ていたが、いまのところそういったサービスは予定されていないようだ。

谷川 耕一[著]

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