大正の若者が青春を刻んだ木版画集『月映』刊行100年記念展カタログ【NADiffオススメBOOK】

FASHION HEADLINE / 2015年4月23日 20時30分

「月映:Tsukuhae」井上芳子(和歌山県立近代美術館)、藤本真名美(和歌山県立近代美術館)、寺口淳治(広島市現代美術館)

各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週木曜日は、アート・ブックショップ「ナディッフ」各店がオススメする1冊をご紹介。今回は愛知・名古屋の支店、ナディッフ愛知(愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター地下2階)です。

■「月映:Tsukuhae」井上芳子(和歌山県立近代美術館)、藤本真名美(和歌山県立近代美術館)、寺口淳治(広島市現代美術館)

大正初期、当時画学生であった田中恭吉、藤森静雄、恩地孝四郎によって企画された詩と木版画の同人誌『月映(つくはえ)』が創刊された。

この版画誌は、1914年9月から1915年11月の間に7号、文芸誌『白樺』の版元であった洛陽堂から200部という限定部数で刊行され、当時はあまり売れなかったが、洋画や日本画が主流とされていた日本の美術界における「創作版画」の先駆けとして、今では稀有で重要な版画誌と位置付けられている。

当時不治の病といわれた結核に罹った田中恭吉が、療養のため帰郷しながらも最期の時まで命を刻むように版画や詩の制作・発表を続けたように、「死」と隣り合わせの彼らの青春時代は、友情をかわしながら互いに高め合い、表現に対するエネルギーに満ちている。

また、この『月映』がきっかけとなって、田中と恩地に、萩原朔太郎の詩集『月に吠える』の挿画と装丁の依頼があったことや、竹久夢二とも親しく交流していたなどからも『月映』周辺の彼らの取り組みが、美術や文化の文脈において重要な意味を持つことが分かる。

現在、愛知県美術館にて『月映』刊行100年を記念した「月映」展が開催されている。(4月17日から5月31日まで)その公式カタログである本書には『月映』全7号のカラー図版を始め、田中、藤森、恩地の3人だけが所有し1部のみ現存するという私家版も収録。その他、油彩画、ペン画などの関連作品、書簡等合計344点の図版を掲載し、巻末の年譜まで充実した1冊となっている。

【書籍情報】
「月映:Tsukuhae」
編集:井上芳子(和歌山県立近代美術館)、藤本真名美(和歌山県立近代美術館)、寺口淳治(広島市現代美術館)
発行元:NHKプラネット近畿
言語:日本語
ソフトカバー/379ページ/152×215mm/切欠き縦スリップケース入り
発刊:2014年
価格:2,315円

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