フリーダ・カーロのドキュメンタリー映画公開。遺品から紐解く、知られざる素顔
FASHION HEADLINE / 2015年5月12日 21時0分
近代メキシコを代表する女性画家フリーダ・カーロの遺品を、世界的な写真家・石内都がメキシコのフリーダの生家で撮影をする過程を収めたドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品 -石内都、織るように』が、8月より全国にて公開されることが決定した。
ファッション誌『VOGUE』の表紙に登場したり、日本では「CABANE de ZUCCa(カバン ド ズッカ)」のイメージキャラクターになったりと、世界中を魅了するアイコン的な存在だったフリーダ。
しかしその本質は、シュルレアリズムの作家としてヨーロッパで高く評価されながらも、身体の不自由やメキシコ近代化の荒波に翻弄されつつ、生涯痛みを背負い、多くの恋に身を焦がした情熱的なひとりの女性だ。
本作では、そんな今もなお多くの女性に刺激を与え続けている彼女の遺品を、石内氏がメキシコの自然光のもと、写真を通じて誰も想像し得なかった“新たなフリーダ・カーロ”像を浮き彫りにしていくーー「生」と「死」が同居するメキシコで、2人の芸術家が時空を超えて交差した、過去ではなく現在(いま)を捉えた作品となっている。
“生きること”そのものを描き続けたフリーダの記憶を内包した遺品たち。彼女のアイデンティティを支えた伝統衣装やアクセサリー、絶え間ない身体の痛みを想起させるコルセットや医薬品など、その数は膨大だ。
実際に3週間にわたりフリーダの遺品たちと対峙した石内氏に、当時を振り返ってもらうとこんな言葉が返ってきた。
「フリーダには熱狂的なファンが多いけれど、正直なところ私はそれほど熱心なファンというわけではなく、ごく一般的な知識しか持ち合わせていませんでした。でも撮るからには、資料として、本は一通り読んで現地に向かったわけです。そうしたら資料の中で見たフリーダと私が出会ったフリーダは全然違っていました。
というのは、写真には撮った人の“感じ方”が如実に表れるものなんです。同じものを撮っても、撮る人によって全く違うものになる。ある本ではコルセットが肉の塊のように撮られていて、女性アーティストってこういうふうに思われているんだな、と残念に思いました。女性が何か表現するとときにスキャンダルだけが強調されて、それだけでイメージが作られることがある。とくにフリーダは恋愛沙汰が多い人でしたから、肉欲の塊のように撮られているんです。
こういった偏見は今も根本的には変わっていません。私もいろいろ言われたことがあります。でも私もそうですが、フリーダは何を言われても関係ない。彼女にはやることがたくさんあって、世間の噂話に関わっている暇はなかったのですから。
私もこうやって作られたイメージを抱いてメキシコに行ったわけですが、そこでちゃんとフリーダと出会うことができたから、運がよかった。私の出会ったフリーダが真実かどうかは別なんです。ただ、今まで私が持っていたイメージとは違っていました」。
フリーダのこれまでのイメージとはまた違った角度で捉えたという本作。監督は『ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ』で、国内外で高く評価された小谷忠典。多くのファンに愛されるフリーダーー彼女の知られざる素顔に注目が集まりそうだ。
『フリーダ・カーロの遺品 -石内都、織るように』は8月、シアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。
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