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黄八丈「八丈島の自然と歴史が刻まれた染織」山下芙美子さん&誉さんに会いに。後編【ENcounter vol.1】

FASHION HEADLINE / 2015年10月3日 12時30分

天蚕は外にいるでしょ、だから鳥が近くを通ったりすると糸を吐く口を1度止めてしまいます。それから、また違うところから糸を吐くので、あんなに大きな繭なのに、あまり糸がとれないんです。糸を紡ぐときに、長く引っ張れないので、手間もかかります。染めに至っても、天蚕で色をのせるには30回近く染めの作業を繰り返さなくてはいけません。

ー糸はなかなか紡げない、量も取れない、さらには染めにも手がかかる。そんな手間暇をかけてでも、天蚕で染織をされるのはなぜでしょう。

もともと黄八丈では15回、20回とか染めているので、それが30回になっても大して変わらないというのもありますね。天蚕は染まらないって、昔から言われているけど、それは普段1回で染めている人が思っていること。普段1回で染めている人に、30回染めろと言っても出来ないの。確かに、手間はかかるし、染まりにくいけど、染めの回数を重ねれば染まるのよ。

ーその手数の多さをいとわないからこそ、黄八丈にしか生み出せない美しい色柄があるんですね。それでも、面倒に思ってしまうことはないんでしょうか。

(少し考えてから)…苦になることはないですね。苦にならない。結局、好きなんですよね。もし、面倒で手のかかる糸だったら「私が織らなくてどうする」っていう気持ちになります(笑)。

ー誉さんも、毎日ことこと草木で糸を染め、天日に干すという工程を繰り返されています。染めに使う草木を育て、刈り取り、毎日新しい染料で染めていく。さらには媒染のための灰汁などもすべて手作業で行っているのですよね。

私達がやっていることは、全然高度な技術ではないから、よい加減でやっています。あとは出たとこ勝負ということもあります。自然との作業なので、偶然の産物も多いですよ。とにかく、手を動かしてやってみることなんです。

ーなるほど。芙美子さん、織りも同じなのでしょうか。

織もそうですね。やりたいと思った表現があったら、せっせと織りを計算してやる。それは苦にならないですね。いろいろと織ってみれば、いろんな表情を出してくれる。与えられたものを受け止め、創意工夫を重ねていく。それが黄八丈なんです。

【編集後記】
今日も八丈島に、黄八丈を織る音が響いているのだろう。染織の技術も去ることながら、絶海の島で与えられた自然を受け止め、先人からの技と心を受け継ぐことで生まれた黄八丈。その美しさを眼の前にすると、ただただその奥深さに引き込まれてしまう。本物がもつ力強さと品格がそこにある。「黄八丈めゆ工房」では、随時見学を受け付けてくれる。ぜひ、あの場所で天日に揺れる絹糸の醸し出す香りに触れ、織機から響く力強い響きを感じて欲しい。

【黄八丈めゆ工房】
東京都八丈島八丈町中之郷2542
電話:04996-7-0411

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